2012年01月16日
後天性血友病A診療ガイドライン(診断):血栓止血学会
日本血栓止血学会から、後天性血友病A診療ガイドラインが出ました。
ここでは、要旨のみを紹介させていただきますが、診療にあたっては必ず全文を熟読していただければと思います。
(参考)血友病、後天性血友病、PT-INR、APTT、第VIII因子インヒビター
「後天性血友病A診療ガイドライン(診断) 」
著者名:田中一郎、他。:
雑誌名:日本血栓止血学会誌 22: 295-322, 2011.
<要旨>(論文からの転写です)
1. 本症の診断ならびに治療は専門家の指導のもとで行われることが望ましい。すなわち、突然の出血症状とともにAPTTのみが延長(血小板数正常、PT正常)し、さらにFVIII:Cの低下を認めた場合は本症を疑うことが重要である。さらに、必要であれば、専門家へコンサルトすることが勧められる。ただし、出血症状が重篤であり、すぐにFVIII:Cや第VIII因子インヒビター(以下、インヒビター)の結果が得られない場合はAPTTのみ延長の段階で専門家にコンサルトもしくは搬送することが望ましい。
2. APTT延長、FVIII:Cの低下に加え、インヒビターが陽性であれば、本症が強く疑われる。ただし、確定診断のためには、VWFの低下およびループスアンチコアグラントの存在を否定する必要がある。
3. インヒビターが検出された時点で明らかな基礎疾患がなくてもその後に基礎疾患が判明する場合があるので、絶えず自己免疫疾患や悪性腫瘍の存在に留意すべきである。
4. 先天性血友病Aと異なり、本症では臨床的重症度とFVIII:Cは一致しない。そのため、FVIII:Cが検出された場合でも重篤な出血を起こす可能性があることに留意すべきである。
5. インヒビターのFVIII:C抑制作用は時間および温度依存性であるため、APTTクロスミキシング試験を行う場合は混和直後と37℃で2時間孵置後の両方の測定を行うことが推奨される。
6. インヒビター力価を測定する際にはあらかじめ被検血漿を56℃で30分間孵置し、血漿中に存在する第VIII因子を不活化することが勧められる。
7. タイプIIインヒビターの力価測定法はいまだ標準化されておらず、インヒビター力価を重症度の絶対的な指標としない。むしろ、免疫抑制療法の効果判定のための検査として評価した方がよい。
(続く)後天性血友病A診療ガイドライン(治療):血栓止血学会 へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:06| 出血性疾患