2012年02月08日
DICの治療:遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤
DICの治療:合成プロテアーゼインヒビターより続く
DICの治療(治療法別)(5)遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤
2) 抗凝固療法
c. 遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤
遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(recombinant thrombomodulin:rTM)(商品名:リコモジュリン)は、日本で使用されるDIC治療薬の中で、最も質の高い臨床試験において有用性が証明されており、今後大変期待されている薬剤の一つです。
Saito H, et al: Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin (ART-123) in disseminated intravascular coagulation: results of a phase III, randomaized, double-blind clinical trial. J Thromb Haemost 5: 31-41, 2007.
出血の副作用が少ないにもかかわらず、ヘパリン類と同等以上の抗凝固活性が期待できます。
臨床で使用されることになる本薬の用量では、トロンビンが存在する状況でのみ抗凝固活性を発揮する(DICが改善してトロンビンがなくなると抗凝固活性を発揮しない)ことが、出血の副作用が少ない理由の一つではないかと考えられます。
なお、本薬には抗炎症効果が報告されています。
Abeyama K, et al: The N-terminal domain of thrombomodulin sequesters high-mobility group-B1 protein, a novel antiinflammatory mechanism. J Clin Invest 115: 1267-1274, 2005.
炎症性疾患に合併したDICに対して、抗凝固、抗炎症の両面から期待されています(炎症と凝固のクロストークの遮断)。
可能であれば、AT濃縮製剤と併用投与したいところですが、保険上の扱いがどうなるか、この記事アップ時点では不明です。
(続く)DICの治療:補充療法へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35| DIC