金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年02月29日

厚生労働省DIC診断基準の改訂へ

理想のDIC診断基準とは?

播種性血管内凝固症候群(DIC)診断基準を論ずる場合には、DICの概念をどう考えているかを明確にしておく必要があります。

海外では、DICの基礎疾患として敗血症などの重症感染症のみを想定した疾患概念が多いように思われます。

しかし、DICの基礎疾患としては、急性白血病、固形癌、大動脈瘤など多くが知られており、どのような基礎疾患であっても通用する疾患概念であることが望まれます。


DICの概念は以下のようにまとめられると思います。

1)基礎疾患の存在
2)全身性持続性の著明な凝固活性化
3)線溶活性化(その程度は基礎疾患により種々)

進行した場合には
4)消費性凝固障害
5)臨床症状(出血症状・臓器層状)に出現
(4)5)はDICであるための必要条件ではないとする考え方です)。


理想のDIC診断基準
に求められる条件として、以下を挙げることができると思います。

1)全ての基礎疾患に適用できること
2)DICの本態を評価していること
3)治療に直結していて患者の予後を改善できること
4)誤診されないこと

厚生労働省DIC診断基準
は、長年にわたり使用されてきた実績のある診断基準ですが、多くの問題点も指摘されてきました。


厚生労働省DIC診断基準の問題点
は、具体的には以下です。

1)臨床の現場では6点(白血病群では3点)で治療開始されており実情に合わない
2)基礎疾患ありでのスコアリングはナンセンス
3)臨床症状でのスコアリングは早期診断に悪影響(DICによる症状であることの鑑別も不可能)
4)PTはDICに特異的なマーカーでない
5)DICの本態である凝固活性化マーカーが含まれていない
6)誤診される症例の多くはFDPが10μg/mL未満であること、など。

また、多様な病態を示す各種基礎疾患に合併したDICを単一の基準で診断することの限界も指摘されています。

基本となるDIC診断基準とは別に骨髄抑制群、感染症群、肝不全群などに対応する診断基準もあった方が良いという考え方もあると思います。

DIC診断基準に凝固活性化を反映する分子マーカー(TATなど)を組み込むことにとって、分子マーカーが更に普及して、日本におけるDIC診療レベルの向上につながることにも期待したいと思います。

なお、今回の記事は、管理人の私見ですので、異論もあると思っています。


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19| DIC