金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年03月09日

血友病と動脈硬化

論文紹介を続けさせていただきます。

血友病の患者さんでは、動脈硬化になりやすいかどうかの検討です。内膜中膜肥厚度(IMT)、上腕動脈を用いた血流依存性血管拡張(flow mediated dilatation : FMD)により評価しています。

 

「第VIII因子欠損は動脈硬化に対して阻止的に作用しない」

著者名:Biere-Rafi, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost   10: 30-37, 2012.


<論文の要旨>

血友病A症例では心血管疾患による死亡率が低いです。

この理由が、低凝固性によるものなのか、動脈硬化が軽度であるためなのかは不明です。


血友病Aのうち、肥満者51例を一般男性のうち肥満者42例および非肥満者50例と比較しました。

頸動脈および大腿動脈の内膜中膜肥厚度(IMT)、上腕動脈を用いた血流依存性血管拡張(flow mediated dilatation : FMD)により動脈硬化と内皮機能の評価を行いました。


全体での年齢は50±13歳でした。

頸動脈IMTは肥満者では0.77±0.22mmであり、非肥満者0.69±0.16mmよりも高値となりました(P=0.008)。

しかし、頸動脈&大腿動脈IMTともに血友病と非血友病との間で差はみられませんでした。

血友病肥満者の35%、一般男性肥満者の29%において動脈硬化性プラークが検出されました。


FMDも血友病肥満者と一般男性肥満者との間で差はみられませんでした。


肥満のある血友病患者では、一般男性血友病者と同様に動脈硬化をきたすものと考えられました。

血友病患者においても心血管危険因子の診断と治療は一般男性と同等に必要と考えられました。
 

<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31| 出血性疾患