金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年04月05日

JAK2遺伝子変異と血栓症:活性化プロテインC抵抗性(PS低下)

原発性骨髄線維症と血栓症:血栓症発症の予知因子より続く

関連記事:本態性血小板血症/真性赤血球増加症:血栓症(インデックス)

PS


ETおよびPVにおけるトロンビン形成とAPC抵抗性 」

著者名:Marchetti, M. et al. 


雑誌名:Blood 112: 4061-4068, 2008.


<論文の要旨>

著者らは、原発性血小板血症(ET)真性多血症(PV)症例におけるJAK2遺伝子変異(V617F)に伴う凝固亢進状態を評価するために、トロンビン形成能での検討を行いました。

トロンビン形成は、活性化プロテインC(APC)の存在下および非存在下で測定して、APC抵抗性は、normalized APC sensitivity ratio(nAPCsr)で表示しました。

血漿中の外因系経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)、総プロテインS、遊離型プロテインS(fPS)、プロトロンビン(FII)、第V因子(FV)、顆粒球エラスターゼを測定しました。

また、好中球表面上のCD11b(血中顆粒球エラスターゼ濃度とともに好中球活性化マーカーとして)をFACSで測定しました。


患者においては健常人と比較して、APC非存在下におけるトロンビン形成能は低かったですが、APC存在下におけるトロンビン形成能は高くなりました。すなわち、APC抵抗性の存在が示されました。

JAK2遺伝子変異(V617F)
キャリアーにおいては、非キャリアーと比較して、nAPCsrは高値となり、特に、JAK2遺伝子変異のホモ接合体では最も高値となりました。

患者においては、FII、FV、fPS、TFPIは低値でした(主にJAK2遺伝子変異のキャリアーで)。

多変量解析の結果、遊離型プロテインS(fPS)の低値が、最もnAPCsrの高値(APC抵抗性と関連していました。

患者においては血中顆粒球エラスターゼが上昇しており、fPSと負の相関を示しました(上図)。


以上、ETやPVにおいては、おそらくfPSの低下によって後天性APC抵抗性の病態になっているものと考えられました。

また、APC抵抗性の表現型は、JAK2遺伝子変異によって影響を受けるものと考えられました。

 

(続く)原発性骨髄線維症(JAK2遺伝子変異)と血栓症

 

<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| 血栓性疾患