JAK2遺伝子変異と血栓症:活性化プロテインC抵抗性(PS低下)
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「ETおよびPVにおけるトロンビン形成とAPC抵抗性 」
著者名:Marchetti, M. et al.
雑誌名:Blood 112: 4061-4068, 2008.
<論文の要旨>
著者らは、原発性血小板血症(ET)、真性多血症(PV)症例におけるJAK2遺伝子変異(V617F)に伴う凝固亢進状態を評価するために、トロンビン形成能での検討を行いました。
トロンビン形成は、活性化プロテインC(APC)の存在下および非存在下で測定して、APC抵抗性は、normalized APC sensitivity ratio(nAPCsr)で表示しました。
血漿中の外因系経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)、総プロテインS、遊離型プロテインS(fPS)、プロトロンビン(FII)、第V因子(FV)、顆粒球エラスターゼを測定しました。
また、好中球表面上のCD11b(血中顆粒球エラスターゼ濃度とともに好中球活性化マーカーとして)をFACSで測定しました。
患者においては健常人と比較して、APC非存在下におけるトロンビン形成能は低かったですが、APC存在下におけるトロンビン形成能は高くなりました。すなわち、APC抵抗性の存在が示されました。
JAK2遺伝子変異(V617F)キャリアーにおいては、非キャリアーと比較して、nAPCsrは高値となり、特に、JAK2遺伝子変異のホモ接合体では最も高値となりました。
患者においては、FII、FV、fPS、TFPIは低値でした(主にJAK2遺伝子変異のキャリアーで)。
多変量解析の結果、遊離型プロテインS(fPS)の低値が、最もnAPCsrの高値(APC抵抗性)と関連していました。
患者においては血中顆粒球エラスターゼが上昇しており、fPSと負の相関を示しました(上図)。
以上、ETやPVにおいては、おそらくfPSの低下によって後天性APC抵抗性の病態になっているものと考えられました。
また、APC抵抗性の表現型は、JAK2遺伝子変異によって影響を受けるものと考えられました。
(続く)原発性骨髄線維症(JAK2遺伝子変異)と血栓症 へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| 血栓性疾患