白血病に合併したDICに対する薬物療法
DICに関するコクランレビューを紹介させていただきます。
「急性または慢性白血病に合併したDICに対する薬物療法」
著者名:Martí-Carvajal AJ, et al
雑誌名:Cochrane Database Syst Rev. 2011 Jun 15; 6: CD008562
<論文の要旨>
著者らは、急性または慢性白血病に合併したDICに対する薬物療法の有効性と安全性を検証しました。
無作為化比較試験(RCTs)の結果を集積しました(CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、LILACS、African Index Medicusより)。
WHO Clinical Trials Registry PlatformのRCTsも追加しました。
全部で4つのRCTs(126例)での検討になりました。
これらの臨床試験では、活性化プロテインC(APC)、遺伝子組換え活性型トロンボモジュリン製剤(rTM)、トラネキサム酸(TA)、デルマタン硫酸(DS)に関する評価(死亡率、出血)が行われていました。
RCTsでは以下のような分類がなされていました。1)白血病群、非白血病群、2)白血病群のみ。
ただし、白血病の分類に関する情報はありませんでした。
測定結果と、死亡率や出血に関する報告に不一致があり、信頼できる結果を集積できませんでした。
評価の対象となったRCTsにはバイアスがかかっている危険性がありました。
急性または慢性白血病に合併したDICに対して、APC、rTM、TA、DSを投与して有効なのか有害なのか不明でした。
今後、十分に信頼性のあるRCTsが必要と考えられました。
その際、転帰は、院内死亡率、全死亡率、呼吸不全・腎不全・ショックからの離脱率、安全性に関して評価されるべきです。
出血の定義も標準化されるべきです。
<コメント>
この報告では、急性または慢性白血病に合併したDICに対する薬物療法の有用性を明確にしたエビデンスと言えるような臨床試験がないことを指摘しています。
その通りでだと思いますが、日本の臨床現場では、線溶活性化が強く出血が前面にでたようなDICに対してはメシル酸名ナファモスタット(フサン)が頻用されています。
急性前骨髄球性白血病(APL)では、ATRAがDIC治療そのものですが、ATRA症候群など芽球が増加する場合にはATRAでDICをコントロールできなくなることが多く、抗凝固療法(rTMなど)が必要となります。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:41| DIC