PNHと血栓症(4):血管内皮障害
Van Bijnen ST, et al. J Thromb Haemost. 2012; 10: 1-10.より引用。
PNHにおける血栓症の発症機序は十分明らかでありません。
機序に関する多くの報告がみられますが、更に今後の検討が必要です。
Van Bijnen ST, et al. Mechanisms and clinical implications of thrombosis in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. J Thromb Haemost. 2012; 10: 1-10.
血管内皮障害
血管内皮障害は血栓症発症の重要な因子です。
PNH赤血球が溶血すると遊離型ヘモグロビンが放出されて、血管内皮を直接障害します。
あるいはGPIアンカー欠損単球が補体によって攻撃を受けると単球由来マイクロパーティクル(単球MP)が放出されて、これが内皮細胞に取り込まれると、血管内皮障害につながります。
この単球MPは組織因子(TF)を含有しているために、内皮細胞でのTF発現が亢進します。
Aharon A, et al. Monocyte-derived microparticles and exosomes induce procoagulant and apoptotic effects on endothelial cells. Thromb Haemost. 2008; 100: 878-85.
内皮障害に伴い、血管内皮由来MP(向血栓性を有する)が血中に遊離されるために、PNH症例では血中の血管内皮由来MP濃度が高くなるという報告があります。
Simak J, et al. Elevated circulating endothelial membrane microparticles in paroxysmal nocturnal haemoglobinuria. Br J Haematol. 2004; 125: 804-13.
PNH症例の血管内皮にPIG-A遺伝子変異があるかどうかは不明ですが(血管内皮前駆細胞は骨髄由来です)、興味ある検討課題と考えられます。
PNH患者から単核球を取り出して血管内皮コロニー形成細胞(ECFCs)を培養したところ、ECFCsにはCD55&59が欠損していたという報告があります。
Helley D, et al. Evaluation of hemostasis and endothelial function in patients with paroxysmal nocturnal hemoglobinuria receiving eculizumab. Haematologica. 2010; 95: 574-81.
また、マウス骨髄移植モデルでの検討では、肝血管内皮のほとんどがドナー由来血管内皮に置き換わることが示されており(肝では血管内皮の置き換え現象が置きやすい)、PNH症例においてGPIアンカーを欠損した骨髄由来血管内皮前駆細胞が肝血管内皮に取り込まれる可能性を示しています。
Gao Z, et al. Repopulation of liver endothelium by bone-marrow-derived cells. Lancet. 2001; 357(9260): 932-3.
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 血栓性疾患