金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年09月27日

PNHと血栓症(13):エクリズマブと血栓症

PNHと血栓症(12):血栓症の治療より続く。

図5


エクリズマブと血栓症(1)

エクリズマブは、近年開発された抗C5ヒト化モノクローナル抗体です。

補体C5に高親和性を示し、C5からC5a、C5bへの開裂を阻害することにより、終末補体活性化経路を完全に阻止し、溶血に対する劇的な抑制効果が示されています。

溶血抑制効果に伴い、ヘモグロビン尿、平滑筋緊張(嚥下障害、腹痛、呼吸困難、勃起不全)、肺高血圧症、腎不全を軽快させて、貧血を改善し輸血量を減少させることができます。


加えて、エクリズマブを投与することで血栓塞栓症の発症を劇的に抑制することができます。

エクリズマブ投与前の血栓塞栓症発症率は 7.37/100人・年であったのに対し、投与後には 1.07/100人・年へ低下します。

Hillmen P, Muus P, Dührsen U, et al. Effect of the complement inhibitor eculizumab on thromboembolism in patients with paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Blood. 2007; 110: 4123-8.


エクリズマブを投与すると血栓性病態が軽快することが血栓止血関連マーカーでも確認することができます。

本薬による治療に伴い、凝固活性化マーカーである血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)&プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)、線溶活性化マーカーである血中プラスミン-α2 プラスミンインヒビター(PIC)、凝固線溶活性化マーカーであるDダイマーの低下が観察されています。

また、血栓性病態のみならず、血管内皮活性化マーカーや炎症性サイトカインの低下も観察されています(上図)。

Helley D, de Latour RP, Porcher R, et al. Evaluation of hemostasis and endothelial function in patients with paroxysmal nocturnal hemoglobinuria receiving eculizumab. Haematologica. 2010; 95: 574-81.

Weitz IC, Razavi P, Rochanda L, et al. Eculizumab therapy results in rapid and sustained decreases in markers of thrombin generation and inflammation in patients with PNH independent of its effects on hemolysis and microparticle formation. Thromb Res. 2012 Apr 27. [Epub ahead of print]

 

(続く)PNHと血栓症(14):ソリリスと血栓症

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| 血栓性疾患