金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年09月28日

PNHと血栓症(14):ソリリスと血栓症

PNHと血栓症(13):エクリズマブと血栓症より続く。


エクリズマブと血栓症(2)

PNH症例に対してエクリズマブ(商品名:ソリリス)を投与しますと血栓症が明らかに低下するという事実から、PNHにおける血栓症発症において補体が主たる役割を演じていることが理解できます。


C5を抑制することで、PNH血小板の活性化・障害、MP遊離が軽減する可能性があります。

また、エクリズマブによって溶血が抑制されれば、遊離ヘモグロビンが低下し、NOの消費が少なくなります。

このことは、遊離ヘモグロビンによる血管内皮障害を軽減し、NOによる血小板機能抑制や凝集抑制作用を回復させることになります。


PNH症例に対してエクリズマブ(ソリリス)を投与しますと血栓塞栓症の発症は明らかに低下します。

このような症例に対して、エクリズマブのみでなく抗凝固療法も必要かどうかに関しては議論の余地があります。

Kellyらは、エクリズマブ(ソリリス)投与が開始された症例では、血栓症の既往がなければワルファリンの投与を中止していますが、その後に血栓症発症はみられなかったと報告しています。

Kelly RJ, Hill A, Arnold LM, et al. Long-term treatment with eculizumab in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: sustained efficacy and improved survival. Blood. 2011; 117: 6786-92.


PNH症例において血栓症の発症があった場合には、エクリズマブを開始する絶対適応になると考える専門家が多いです。

Luzzatto L, Gianfaldoni G, Notaro R. Management of paroxysmal nocturnal haemoglobinuria: a personal view. Br J Haematol. 2011; 153: 709-20.

Brodsky RA. How I treat paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Blood. 2009; 113: 6522-7.

エクリズマブを投与中に血栓症を発症した場合に、血栓症再発防止を目的に永続的に抗凝固療法を行うべきかどうかは、議論の分かれるところです。

エクリズマブ(ソリリス)が投与されていれば血栓症発症症例においても抗凝固療法を中止できる(永続的な投与は必要ない)という報告がある一方で、エクリズマブ投与前に血栓症既往のあった場合はエクリズマブと抗凝固療法の併用を行っていても血栓症を再発したという報告もあります。

Emadi A, Brodsky RA. Successful discontinuation of anticoagulation following eculizumab administration in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Am J Hematol. 2009; 84: 699-701.

Kelly RJ, Hill A, Arnold LM, et al. Long-term treatment with eculizumab in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: sustained efficacy and improved survival. Blood. 2011; 117: 6786-92.

 

 (続く)PNHと血栓症:インデックス

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04| 血栓性疾患