金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年01月11日

小児血友病における運動と出血リスク

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


「小児血友病における運動と出血リスクの関連

著者名:Broderick CR, et al.
雑誌名:JAMA 308: 1452-1459, 2012.


<論文の要旨>

小児血友病患者において激しい運動は出血のリスクを増やすと考えられていますが、その程度は不明です。

著者らは運動に伴う一過性の出血リスクの増加を定量しました。


オーストラリアの3つの血友病治療センター(2008.7.〜2010.10)における中等症〜重症小児血友病A&B男児(4〜18才)を対象に、出血イベントを一年間調査しました。

出血後に、患者または親より、出血前の運動状況について確認しました。

運動に伴う衝撃の頻度や強さにより運動種を分類しました。


その結果、4839人•週の観察期間中に、436回の出血が見られました。

このうち336回の出血は、前回出血後2週間以上経過して発生しており、リスクの一次解析に用いられました。

運動無しおよび運動分類1(水泳など)と比較して、分類2(バスケットボールなど)では一過性に出血リスクが増加しました(OR 2.7, P<0.001)。

分類3(レスリングなど)ではさらに出血リスクが増加しました(OR 3.7, P<0.001)。


1年間に5回出血し、週に2回の分類2の運動および週に1回の分類3の運動を行っている小児患者では、出血が運動と関連していたのは年5回中1回のみでした。

凝固因子活性が1%上昇する毎に、出血発生率は約2%低下しました。


以上、小児血友病では激しい運動に伴い出血リスクは若干増加しましたが、このリスク増加は一過性であり運動と出血の関連は小さいと考えられました。


<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29| 出血性疾患