金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年01月17日

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(4)

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(3)より続く


血栓止血研究室(血管診療グループ)紹介(4)

抗リン脂質抗体症候群(APS)
に対しても精力的にとり組んできました。

当科の「血栓止血外来」で診療を受けられる患者さんの過半数はAPS関連の疾患を持っておられますので、臨床的にも比重の大きい重要疾患であり,外来担当者全員で診療にあっております。

現在、森下が名古屋市立大学産科の杉浦先生を中心とした抗リン脂質抗体陽性の「不育症における原因遺伝子のゲノムワイド関連解析」の共同研究に参加しております。

APSはいまだ不明の部分も多い疾患群ですが、徐々に解明され、コントロール可能となっていくことを,大いに期待して研究に取り組んでおります。


先天性凝固障害の分子病態に関する研究としては、森下および保健学科の学生らを中心に、凝固因子および凝固阻止因子の分子異常について幅広く研究しています。

一般的には先天性凝固因子欠損症では出血傾向を、凝固阻止因子欠損症では血栓傾向を呈することが知られています。そのような異常を呈する症例について家族を含めて遺伝子解析を行い、その変異部位の同定を行っています。

さらに、組み換えDNAの手法を用いて異常分子を作成し、その機能解析を行っております。

今までに,世界でも報告のない新たな変異部位を次々と明らかにしました。

現在,血栓傾向をきたす先天性第V因子欠損症というきわめてアジア系人種ではまれな家系に遭遇し,その血栓形成メカニズムの解明に取り組んでおり,第V因子の新たな機能が明らかになるかもしれません。

ヘムの分解酵素であるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1) ならびにその分解産物である一酸化炭素(CO)の抗血栓作用についての研究を大学院生丸山が明らかにし、Trombosis Reserchにacceptされました。

HO-1ならびにCOは血栓傾向に対する治療戦略の一つとして利用できる可能があると考えております。


また、林らは大動脈瘤に合併するDICの病態に迫るべく大動脈瘤のラット動物モデルを作成し、線溶作用を有するアネキシンIIが高発現していることを免疫組織学的染色およびreal-time RT-PCR法を用いて明らかにしました。

また臨床的には、大動脈瘤手術症例の切除標本と血中分子マーカーを用いた検討を、心肺・総合外科の血管グループと共同研究で行っております。

最近、大動脈瘤壁組織の免疫組織学的検討においてアネキシンIIが濃染することを明らかにし、瘤形成における線溶系の関与を示唆しました。

以上、血栓止血研究室は、生体の最も基本的な生理反応である止血と、人類が克服すべき血栓症を扱っています。また、この領域は追求する程に味わいのある深淵な学問であると思っています。志を同じくする同志が一人でも増えることを願ってやみません。                      

(続く)血栓止血研究室(血管診療G)紹介(インデックス)


<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25| 血栓止血(血管診療)