2013年ヨーロッパ血液・骨髄移植学会(2)PT-CYレジメン
2013年ヨーロッパ血液・骨髄移植学会(1)EBMTより続く。
「2013年ヨーロッパ血液・骨髄移植学会(EBMT)に参加して」(2) by 丸山裕之
翌日より始まった学会においては、様々な角度から移植に関連するセッションが組まれており、多数の興味深い発表がなされていました。
私は主に研究分野の骨髄不全症に関わるセッションや、教育講演、プレナリーセッションを中心に参加させていただきました。
大規模臨床試験に基づくデータや、最新の基礎研究の知見をまとめて知ることができたとともに、教育講演ではその分野の第一人者が演者としてレクチャーしてくださり、知識の整理と現在のトピックスを吸収する大変良い機会となりました。
一方で、自分の英語力の未熟さから十分に理解できない部分もあり、共通言語の英語の研鑽の必要性を強く自覚いたしました。
印象に残った発表はいくつかありましたが、私にとって最も衝撃的であったのは、移植後早期にシクロフォスファミドを投与するpost-transplant CY(PT-CY)レジメンを用いたHLA半合致血縁ドナーからの移植(ハプロ移植)についての報告でありました。
イタリアのBacigalupoらは、自施設でのドナーソース別の移植成績を検討し、PT-CYレジメン併用ハプロ移植では、GVHD発症率や移植後治療関連死亡はHLA一致同胞ドナーからの移植と同等に低く、また、再発関連死亡率や無病生存率はHLA一致同胞ドナー・非血縁ドナー・非血縁ドナー臍帯血・HLA半合致血縁ドナーのソース間で有意差はなかったという驚くべき結果を報告していました。
また、ジョンスホプキンスのFuchsらも、PT-CY併用ミニレジメンでのハプロ骨髄移植の成績を検討し、やはりGVHD発症率や非再発死亡率、全生存率においてハプロ移植はHLA一致同胞ドナーからの移植に匹敵する良好な成績であったことを報告していました。
これらの発表では、衝撃的なデータの報告に会場は驚きと期待の混じった熱気に包まれ、発表後も参加者らが熱心に演者に質問する様子が見られるなど、大変盛り上がりました。
このように、最先端の革新的な発表を(会場の熱気も含めて)全世界からの参加者とともに共有できることは、海外学会の醍醐味の一つであると感じました。
PT-CYレジメン併用ハプロ移植は、今後日本での臨床試験の報告が待たれるところではありますが、移植の重要な選択肢としてとても期待を持ちました。
(続く)2013年ヨーロッパ血液・骨髄移植学会(3)再生不良性貧血へ
<リンク>:臨床に直結する血栓止血学
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12| その他