金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年11月29日

キノコの山をめぐる冒険(3)慢性咳嗽

キノコの山をめぐる冒険(2)ドンファンホテルより続く。


「キノコの山をめぐる冒険(広州編)」(3)   by   小川晴彦

<アトピー咳嗽>と、<咳喘息>は好酸球性炎症の場が異なり、カプサイシンに対する咳感受性が異なる。

<気管支喘息>と<咳喘息>は、メサコリンによる中等度平滑筋収縮における咳反応性が全く異なり(大倉先生、藤村先生ら)、咳喘息は喘息の単なる軽症型ではない。

学会4

ところで、みなさん。慢性咳嗽と関係の深い環境真菌は、キノコの胞子だということ、ご存知でしたか? 

Bjerkandera adusta ブエルカンデラっていうのですが、これ、キノコの胞子なんですよ。

そう、野山に茂っている キノコの笠の裏にくっついているやつ。

今日はこれ“BJ”って呼びますね。

BJは、フランスのレストラン、いえ、フランスの病院の室内環境真菌で3番目に多いことが報告されています。

キノコはフレンチの人気の食材ですから!?


<のどに粘膜がはりつくような感じ>は、A sensation of mucus in the throat (SMIT)といって、真菌がのどにくっついている可能性を示唆する、慢性咳嗽を診療するに当たって見落としてはいけない、重要な喉頭症状であることがわかってきました(Respirology 2013)!  

つまり、日常診療においてもSMITを認識すれば、抗真菌薬を用いる全くあたらしい咳嗽治療を展開できるかもしれないのです。


(壇上から見わたす満員の会場、最前列には、モーリス、マックガーヴィー、スリンダー、ファンチュンらがどっかりと腰をすえ、今回の会長 Prof Nanshan Zhongの姿もみえる)


なぜ、私がこの会議に召集されたか もうおわかりですね。
Yes, because I am fun guy (Fungi)! 
少し遅れて、後ろのほうがざわめいた。ようだった。


「はじめまして。あなたが同時通訳をしてくださるのですね? よろしくお願いします。」

「じゃあ、さっそく、全部とおしてみて。」

「全部やるの?」 

「そう、全部よ。」

本番までのわずかな時間ではあったが、入念にリハーサルを行った。

僕のあやしげな英語に彼女は懸命においつこうとし、発音の悪いところは、眉をしかめながらも、もう一度よ と強く見つめ返してきた。



みなさん、どうでしょう。

もう、キノコのこと、金沢だけの話ではない。ですよね。

さあ、誰が最初に、この広州でBJを発見するでしょうか?!  Let’s go into the forest!

かけがいのない時間は、瞬く間にすぎた。

最後に、ご指導いただきました藤村政樹先生に深謝いたします。

ご清聴ありがとうございました。


大きな拍手と高鳴る鼓動が重なり合った。

(続く)キノコの山をめぐる冒険(4)ドクターBJ

 

 <リンク>:臨床に直結する血栓止血学

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36| その他