金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年12月05日

セカンドオピニオン外来(3)骨髄不全

セカンドオピニオン外来(2)申し込み、受診、診療より続く。

 
セカンドオピニオン外来の風景(3)  by   中尾眞二

血液難病の診断は難しい

悪性疾患の場合、診断に問題があることはほとんどない。

一方、骨髄不全の場合には、紹介医の診断が正しくないことがしばしばある。

これは必ずしも主治医に問題があるためではなく、骨髄不全という疾患群そのものの鑑別診断がそもそも難しく、既存の診断基準に矛盾があることが影響している。

ただ、セカンドオピニオンの場合、患者さんが自分の病気の診断を疑って来院することは稀で、通常は治療方針の確認か別の可能性がないかを知りたくて来院する。

このため、診断が間違っていると現場を取り繕うのに苦労することになる。

そのような場合には紹介状を書いてくれた主治医に失礼にならないように、患者さんに診断の難しさを伝えたうえで治療方針の変更を提案するようにしている。

もっとも多いのは、良性疾患の再生不良性貧血や発作性夜間血色素尿症(PNH)がMDS(前白血病状態)と診断され、適切な治療がなされていない例である。

逆に、再生不良性貧血と診断されて来院したにもかかわらず、よくデータをみると急性白血病であったため外来で説明に窮したこともあるが、これは幸い稀である。

圧倒的に多いのは再生不良性貧血・PNHがMDSと診断されている場合である。

患者さんは医師からMDSと言われたため、いつ白血病に変わるのかと不安に苛まれる日々を過ごしてきた患者さんが、実は良性の病気であると分かって喜ばれるのをみると、時間を取った介があったという気持ちになる。

一方で、これは氷山のほんの一角であり、同じような「誤診」が全国で起こっていることを考えると暗澹たる気持ちになる。

金沢大学病院では、実際に外来を受診するセカンドオピニオン外来とは別に、骨髄不全の診断と治療に関するメール相談を10年以上前から受け付けている。

当科でしか行えない特殊検査があるため、年間に1,000例近い相談が全国から寄せられるが、その中で施設診断がMDSとされている例の約半数は、実際には再生不良性貧血である。

骨髄不全の診断が如何に難しいかを示している。

(続く)セカンドオピニオン外来(4)MDSではなく再生不良性貧血


<リンク>:臨床に直結する血栓止血学

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11| その他