L-アスパラギナーゼと血栓症(2)副腎皮質ステロイド
L-アスパラギナーゼと血栓症(2)副腎皮質ステロイド
ALLに対して多剤併用化学療法を行っても、L-アスパラギナーゼが組込まれていない治療であれば血栓症の発症はないことを考慮しますと、血栓症発症に及ぼすL-アスパラギナーゼの意義は大きいと考えられます。
Kantarjian HM, et al. Results of treatment with Hyper-CVAD, a dose-intensive regimen, in adult acute lymphocytic leukemia. J Clin Oncol. 2000; 18: 547–561.
凝固異常の程度が強い場合は、新鮮凍結血漿により、凝固因子、凝固阻止因子の両者を補充し、血栓止血のバランスを安定化させることで対応可能です。
特に、ALLのうちNCI(National Cancer Institute Criteria)基準で高リスク(High Risk:HR、白血球数が5万/μl以上または10歳以上)の症例では新鮮凍結血漿による予防の価値があります。
Abbott LS, et al. The impact of prophylactic fresh-frozen plasma and cryoprecipitate on the incidence of central nervous system thrombosis and hemorrhage in children with acute lymphoblastic leukemia receiving asparaginase. Blood. 2009; 114: 5146-5151.
リンパ性悪性疾患に対してL-アスパラギナーゼを投与する場合に、副腎皮質ステロイドが併用される治療プロトコールが多いです。
副腎皮質ステロイドは、向凝固、抗線溶に作用することが知られています。
Van Zaane B, et al. Systemic review on the effect of glucocorticoid use on procoagulant, anti-coagulant and fibrinolytic factors. J Thromb Heamost. 2010; 8: 2483–2493.
副腎皮質ステロイドは、L-アスパラギナーゼの血栓症を助長している可能性があります。
副腎皮質ステロイドの種類による差異を検討した報告では、プレドニゾロンよりもデキサメタゾンの方が血栓症発症頻度が少ないと報告されています。
Van Den Berg H. Asparaginase revisited. Leuk Lymphoma. 2011; 52: 168–178.
(続く)L-アスパラギナーゼと血栓症(3)抗凝固療法へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28| 血栓性疾患