日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案(13)旧&新基準の相違点
日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案を考える(13)旧&新基準の相違点
日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案を考える(インデックス)
詳細はこちら:http://www.jsth.org/committee/pdf/DIC_3.pdf
<新しいDIC診断基準> 旧&新基準の相違点
新基準(日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案)では、アルゴリズムを用いて基礎病態により診断基準を使いわけることを明確にしました。
旧基準(旧厚生省DIC診断基準)においても白血病群、非白血病群でスコア法を変える工夫がなされていましたが、新基準では造血障害型のみならず感染症型でも診断基準を使い分けることを明確にしました。
造血障害型において血小板数をスコアから除く点については、旧基準の白血病群でも同様の配慮がなされていましたが、新基準ではさらに感染症でフィブリノゲンをスコアから除きました。
旧基準では基礎疾患と臨床症状でもスコアリングが行われていましたが、新しい基準では既述の理由により削除しました。
血小板数に関しては、旧基準では加点されなかった経時的減少が新基準では1点の加点項目としました。
ATに関しては、現時点では暫定的にATを組込んだ診断基準として、今後多施設での検証作業を実施することとされました。
凝固線溶系分子マーカーが、診断基準に組込まれました。
分子マーカーが組込まれた診断基準は世界的にも斬新なものです。
旧基準においても肝硬変および肝硬変に近い病態の慢性肝炎では3点減ずることになっていますが、臨床現場では必ずしも適切に行われているとは限らず、DIC誤診の原因の一つになっていました。
新基準ではこのような背景のもと、従来適用されなかった劇症肝炎症例も念頭に、肝不全で3点減じることを診断基準の表の中に組込みました。
<総括>
DIC診断基準は、患者の治療や予後に直結するために極めて重要な意義を有しています。
これまで我が国では、旧厚生省DIC診断基準が頻用されてきましたが、感染症に起因するDICの診断には感度が悪いなど多くの問題点が指摘されてきました。
急性期DIC診断基準は、感染症に合併したDICの診断には威力を発揮しますが、全ての基礎疾患に対して適応できません。
この度、「日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案」が発表されました。
http://www.jsth.org/committee/pdf/DIC_3.pdf
この基準は、基礎疾患で診断基準を使い分けること、分子マーカーやアンチトロンビンが診断基準に組込まれていること、誤診対策がなされているなど優れた点が多く、今後の展開が期待されます。
日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案を考える(インデックス)
<リンク>
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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| DIC