金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2017年07月27日

ビタミンK欠乏症とヘパプラスチンテスト(HPT)、PT-INR

医師国家試験再現問題と解説です。

ビタミンK欠乏症の患者において血液検査で低値となるのはどれか.

a FDP
b PT-INR
c PIVKA-II
d ヘパプラスチンテスト
e APTT〈活性化トロンボプラスチン時間〉



(解説)
a FDPは、播種性血管内凝固症候群(DIC)、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓)などで上昇します。ビタミンK欠乏症では、FDPは変動しません(FDPの正常値:<5μg/mL程度)。

b ビタミンK欠乏症では第VII、IX、X、II因子が低下するために、PTは延長します。PT-INRで表現すれば上昇します。

c PIVKA-IIは、Protein Induced by Vitamin K Absence –IIの略称であり、文字通りビタミンK欠乏状態で出現します、活性のない第II因子(プロトロンビン)です。ビタミンK欠乏症では上昇します。なお、PIVKA-IIは、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても知られています。

d ヘパプラスチンテスト(HPT)は、PTの亜系の検査です。HPTに使用する試薬は、PTと同じく組織因子です(どちらも外因系凝固活性化機序を反映)が、HPTはアッセイ系に十分量のV因子、I因子(フィブリノゲン)が含まれるために、V因子、I因子の影響をうけなくなります。つまり、HPTは、VII、X、II因子の3つの凝固因子のみに左右されます。この3つの因子はビタミンK依存性凝固因子です。そのため、ビタミンK欠乏症ではHPT(%)は低下します。

e ビタミンK欠乏症では第VII、IX、X、II因子が低下するために、APTTは延長します。ただし、PTよりも延長が軽度です。


(ポイント)

ビタミンK依存性蛋白
1)    4つの凝固因子(半減期の短い順番に、第VII、IX、X、II因子)
2)    2つの凝固阻止因子(プロテインC、プロテインS)
3)    オステオカルシン(骨代謝に関与)など



(正答)
  d




ワルファリンについて正しいのはどれか。
a 直接トロンビン阻害薬である。
b プロテインCの作用を増強する。
c 納豆はワルファリンの作用を増強する。
d 重篤な肝障害の患者では効果が限弱する。
e 薬効のモニタリングにPT-INRを用いる。


(解説)
a ワルファリンは、ビタミンK依存性凝固因子であるVII、IX、X、II因子(半減期の短い順番)の活性を低下させます。II因子(プロトロンビン)の活性を低下させますが、トロンビンの直接阻害作用はありません。直接トロンビン阻害薬としてはダビガトランが知られており、心房細動の脳塞栓予防に使用されます。

b ワルファリンは、ビタミンK依存性凝固阻止因子であるプロテインC、プロテインS活性を低下させます。

c ワルファリンはビタミンK拮抗薬です。納豆には大量のビタミンKが含まれるために、ワルファリンの効果を限弱させます。

d 重篤な肝障害の患者では、ほとんどの凝固因子活性が低下します(凝固因子は肝臓で産生されます)。そのためにワルファリンの効果が増強します。

e ワルファリン薬効のモニタリングには、PT-INRを用います。


(ポイント)
PT-INR:prothrombin time-international normalized ratioの略(プロトロンビン時間国際標準比)。
PT-INRは、以下の式で算出されます。

PT-INR(←クリック)


ISI:PT試薬ごとに国際感受性指標 (International Sensitivity Index:ISI)が設定されています。
ISIは1.0〜1.4くらいのことが多いですが、1.0に近いPT試薬が好まれています。

PTが延長する疾患・病態ではPT-INRは上昇します。
なお、健常人のPT-INRは、1です。

(正答)  e



<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57| 医師国家試験・専門医試験対策