ループスアンチコアグラント(LA):血液凝固検査入門(27)
抗リン脂質抗体症候群の血液検査:血液凝固検査入門(26)から続く。
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ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)検査は、抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)の診断時には必要不可欠な重要な検査です。
しかし、LA検査時には多くの注意点があります。以下の配慮がない場合には、LA診断が適切になされなくなってしまうのです。
1) 血小板の混入をさける:
そのために通常の遠心ではなく、強遠心を行います(4,000g、30分)。加えて、更に血小板を除去するために血小板除去フィルターを用います。検体に血小板が残っていますと、LA(抗リン脂質抗体の一つ)が、血小板のリン脂質と反応してしまうために、試験管レベルで凝固反応に干渉するLAが少なくなってしまうのです。LA診断の感度をアップさせうために、強遠心と血小板除去フィルターの使用は必須と考えられます。
2) 凍結検体の注意:
血小板が除去されていない状態で、凍結しますと血小板の破壊に伴って検体中にリン脂質がばらまかれるようなことになってしまいます。検体凍結が必要な場合には、血小板の除去はしっかり行っておく必要があります。この注意がありませんと、よほど力価が高い場合以外は、ほとんど全ての検体がLA陰性と診断されてしまうでしょう。
3) クロスミキシング試験:
LAなどの循環抗凝血素(インヒビター)の存在を証明するには、クロスミキシング試験(混合試験)が不可欠です。しかし、大手検査委託会社であっても、LA検査で混合試験を行っていないのが現状だと思います。
4) dRVVT:
LA検査としての保険点数は、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)にしかついていません。
LA検査には、dRVVTの他に、カオリン凝時間(KCT)、KCTの混合試験、血小板中和法(PNP)、希釈APTT法など多くの検査が存在しますが、dRVVTのみでは多くの見逃し症例が出てしまうでしょう。
なお、金沢大学附属病院血液凝固検査室では、カオリン凝時間(KCT)&混合試験(確認のためのPNP)、dRVVT(低濃度リン脂質と高濃度リン脂質)&dRVVTの混合試験を行っています。
もし、dRVVTのみでLAの有無を判定したとしますと、LA陽性と診断される症例は、1割程度に著減してしまうのではないかと思います。換言致しますと、KCT&混合試験でLA陽性と診断されることの方がはるかに多いです。
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・抗リン脂質抗体症候群とは
・抗リン脂質抗体症候群と血栓症
・抗リン脂質抗体症候群と不妊症/不育症
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・PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
・ PIC
・ アンチトロンビン
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・ PT(ワーファリン)&トロンボテスト
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 11:36| 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)