2009年03月30日
ループスアンチコアグラント検査の必要性:血液凝固検査入門(28)
ループスアンチコアグラント(LA):血液凝固検査入門(27)から続く。
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抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)の診断のためには、ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)と、抗カルジオリピン抗体(anticardiolipin anibody:aCL)の両者の測定が不可欠です。
どのような時に、LAやaCLを測定するのでしょうか。
換言しますと、どういう時にAPSを疑うべきでしょうか。
金沢大学血液内科・呼吸器内科(第三内科)では、以下のような場合に、LAやaCLの測定を行っています。
ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体の測定が必要な場合
1)不育症(習慣性流産):
習慣性流産(3回以上の流産)を含む不育症では必ず両検査を行うべきと考えられます。
不育症の原因は多数ありますが、内科が関与する場合で最も多いのはAPSです。APSの場合には適切な治療(アスピリン内服、ヘパリン皮下注)を行うことによって、挙児を得ることができますので、この診断は重要です。
なお、念のためですが、ワルファリン(商品名:ワーファリン)には、催奇形性の副作用があることを熟知しておく必要があります。
2)危険因子が明らかでない動脈血栓症:
高血圧症、糖尿病、高脂血症などの動脈血栓症危険因子が明らかでない動脈血栓症では、両検査を行うべきです。
特に、若年性脳梗塞や、多発性ラクナ梗塞では必ず測定すべきです。また、腸間膜動脈血栓症、網膜中心動脈血栓症のように比較的まれな部位の動脈血栓症でも測定すべきです。
3)全ての静脈血栓症:
深部静脈血栓症、肺塞栓などの静脈血栓症では全症例で測定すべきです。
また、腸間膜静脈血栓症、網膜中心静脈血栓症、矢状静脈洞血栓症、門脈血栓症のように比較的まれな部位の静脈血栓症でも測定すべきです。
4)膠原病:
SLEほか、全ての膠原病では必ず測定しておくべきでしょう。
5)原因不明のAPTT延長、血小板数低下:
このような場合にも測定すべきです。LA陽性例では、APTTが延長することがあります。
ただし、既に記事にさせていただいたように、LA陽性であってもAPTTが延長しないこともありますので、APSを疑ったら、APTT延長の有無にかかわらず、LAを検査する必要があります。
6)特発性血小板減少性紫斑病(ITP):
ITPの4割の症例で抗リン脂質抗体が合併するという報告もあります。ITPでは全例測定すべきと考えられます。
特に、ITPに対して摘脾術を行う場合には、術後血小板数が上昇することともあいまって、深部静脈血栓症や肺塞栓などの血栓症を発症する懸念があります。ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体のは必ずチェックしておくべきと考えられます。
もし術前に抗リン脂質抗体が陽性であることが判明している場合には、術後血栓症の予防はより厳重に行う必要があります。
7)その他:
網状皮斑、多発性硬化症、てんかん、心臓弁膜症、黒内障など。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 23:04| 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)