2009年3月21日
クロスミキシングテスト(混合試験):血液凝固検査入門(24)
APTT延長の解釈:血液凝固検査入門(23)から続く。
第21回日本検査血液学会学術集会(金沢2020年):血栓止血関連プログラムも豊富です。
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APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の延長がみられた時に、診断にいたるための方向性を示してくれるのが、クロスミキシング試験(cross mixing test)です(混合試験とも言います)。
PTの延長(PT-INR上昇)がみられた場合にも、クロスミキシング試験を考慮することがありえますが、臨床ではAPTT延長時に行う機会の方がはるかに多いと思います。
まず関連記事をご覧いただいてから、読み進めていただいた方が分かりやすいと思います。
(関連記事)クロスミキシング試験(凝固因子インヒビター定性):混合試験 mixing test
なお、抗リン脂質抗体症候群(antiphopholipid syndrome:APS)の診断に、抗カルジオリピン抗体とともに不可欠な「ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)」の存在を疑った場合には、APTTではなくカオリン凝固時間(Kaolin clotting time:KCT)によるクロスミキシング試験を行った方が良いです。
(理由)KCT、APTTともに内因系凝固活性化機序を評価する検査ですが、KCT試薬にはリン脂質が含まれておらず文字通りカオリン(異物)のみが含まれています。APTT試薬には、異物成分に加えてリン脂質も含まれているために、患者検体中のLAが試薬中のリン脂質とも反応してしまい感度が低下するのです(凝固反応への干渉が少なくなります)。
また、重要な注意点として、患者血漿と正常血漿を上記のような比で混合してすぐにAPTTやKCTを測定しても正しい判断ができない場合があります。患者血漿と正常血漿を2時間incubationした後に凝固時間を測定して、初めて正しい判断ができることがあります。このような代表的疾患は、後天性血友病(第VIII因子インヒビター)です。
Inhibitor pattern:mixing curve(混合曲線)が上向きに凸となります。
(代表的疾患)
1) ループスアンチコアグラント(LA):しばしば、APTTが延長します(PTは正常のことが多いです)。抗リン脂質抗体症候群の診断には、ループスアンチコアグラントと、抗カルジオリピン抗体の測定が不可欠です。APSは最も多い後天性血栓性素因ですが、おそらく現在診断されている症例は氷山の一角であり、いわゆる隠れAPS症例が相当数に昇ると推測されます。なお、金沢大学検査部では、年間に約800検体のLA検査依頼がされています(依頼件数は、更に上昇中)。
2) 血友病A(先天性疾患)で第VIII因子濃縮製剤治療に伴い、第VIII因子インヒビター(第VIII因子インヒビターに対する抗体)が出現した場合。APTTの延長がさらに高度になります(PTは正常)。血友病A患者にとって第VIII因子は自分で産生されない蛋白ですので(血友病A患者にとって第VIII因子は未知の蛋白ですので)、治療目的で投与される第VIII因子に対して抗体が出現することがあり、血友病Aの治療を困難にする大きな要素の一つです。
3) 後天性血友病:APTTが延長します(PTは正常)。第VIII因子に対する自己抗体が出現する疾患です。まれな疾患ですが、この病気に対する十分な知識を有していませんと救命しうる命を失ってしまうことがあります。膠原病、悪性腫瘍、高齢、出産などが危険因子とされていますが、明らかな危険因子がない場合も多いです。皮下出血、筋肉内出血などの出血症状をきたすのが特徴です(血友病Aとは異なり関節内出血はまれです)。脳出血もありえます。後天性血友病は、男女ともに発症しえます(血友病A&Bは、伴性劣性遺伝のため男性のみ)。
上記のように第VIII因子インヒビター(抗体)の出現は、血友病A治療の合併症、後天性血友病(自己抗体の出現)の2つのパターンがあります。第VIII因子インヒビターは共通のキーワードですが、意味合いは異なります。
Deficiency pattern:mixing curve(混合曲線)が下向きに凸となります。
(代表的疾患)
1) 血友病A:第VIII因子の先天性欠損症です。APTTが延長します(PTは正常)。
2) 血友病B:第IX因子の先天性欠損症です。APTTが延長します(PTは正常)。
3) ビタミンK欠乏症:血液凝固VII、IX、X、II因子活性が低下します。PT&APTTともに延長します(特にPT)。
4) 肝不全:凝固因子は全て肝で産生されます。肝不全では、全ての凝固因子が低下します。PT&APTTともに延長します(特にPT)。
血液凝固検査入門(インデックスページ) ← 血液凝固検査入門シリーズの全記事へリンク。
血友病
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の延長がみられた時に、診断にいたるための方向性を示してくれるのが、クロスミキシング試験(cross mixing test)です(混合試験とも言います)。
PTの延長(PT-INR上昇)がみられた場合にも、クロスミキシング試験を考慮することがありえますが、臨床ではAPTT延長時に行う機会の方がはるかに多いと思います。
まず関連記事をご覧いただいてから、読み進めていただいた方が分かりやすいと思います。
(関連記事)クロスミキシング試験(凝固因子インヒビター定性):混合試験 mixing test
なお、抗リン脂質抗体症候群(antiphopholipid syndrome:APS)の診断に、抗カルジオリピン抗体とともに不可欠な「ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)」の存在を疑った場合には、APTTではなくカオリン凝固時間(Kaolin clotting time:KCT)によるクロスミキシング試験を行った方が良いです。
(理由)KCT、APTTともに内因系凝固活性化機序を評価する検査ですが、KCT試薬にはリン脂質が含まれておらず文字通りカオリン(異物)のみが含まれています。APTT試薬には、異物成分に加えてリン脂質も含まれているために、患者検体中のLAが試薬中のリン脂質とも反応してしまい感度が低下するのです(凝固反応への干渉が少なくなります)。
また、重要な注意点として、患者血漿と正常血漿を上記のような比で混合してすぐにAPTTやKCTを測定しても正しい判断ができない場合があります。患者血漿と正常血漿を2時間incubationした後に凝固時間を測定して、初めて正しい判断ができることがあります。このような代表的疾患は、後天性血友病(第VIII因子インヒビター)です。
Inhibitor pattern:mixing curve(混合曲線)が上向きに凸となります。
(代表的疾患)
1) ループスアンチコアグラント(LA):しばしば、APTTが延長します(PTは正常のことが多いです)。抗リン脂質抗体症候群の診断には、ループスアンチコアグラントと、抗カルジオリピン抗体の測定が不可欠です。APSは最も多い後天性血栓性素因ですが、おそらく現在診断されている症例は氷山の一角であり、いわゆる隠れAPS症例が相当数に昇ると推測されます。なお、金沢大学検査部では、年間に約800検体のLA検査依頼がされています(依頼件数は、更に上昇中)。
2) 血友病A(先天性疾患)で第VIII因子濃縮製剤治療に伴い、第VIII因子インヒビター(第VIII因子インヒビターに対する抗体)が出現した場合。APTTの延長がさらに高度になります(PTは正常)。血友病A患者にとって第VIII因子は自分で産生されない蛋白ですので(血友病A患者にとって第VIII因子は未知の蛋白ですので)、治療目的で投与される第VIII因子に対して抗体が出現することがあり、血友病Aの治療を困難にする大きな要素の一つです。
3) 後天性血友病:APTTが延長します(PTは正常)。第VIII因子に対する自己抗体が出現する疾患です。まれな疾患ですが、この病気に対する十分な知識を有していませんと救命しうる命を失ってしまうことがあります。膠原病、悪性腫瘍、高齢、出産などが危険因子とされていますが、明らかな危険因子がない場合も多いです。皮下出血、筋肉内出血などの出血症状をきたすのが特徴です(血友病Aとは異なり関節内出血はまれです)。脳出血もありえます。後天性血友病は、男女ともに発症しえます(血友病A&Bは、伴性劣性遺伝のため男性のみ)。
上記のように第VIII因子インヒビター(抗体)の出現は、血友病A治療の合併症、後天性血友病(自己抗体の出現)の2つのパターンがあります。第VIII因子インヒビターは共通のキーワードですが、意味合いは異なります。
Deficiency pattern:mixing curve(混合曲線)が下向きに凸となります。
(代表的疾患)
1) 血友病A:第VIII因子の先天性欠損症です。APTTが延長します(PTは正常)。
2) 血友病B:第IX因子の先天性欠損症です。APTTが延長します(PTは正常)。
3) ビタミンK欠乏症:血液凝固VII、IX、X、II因子活性が低下します。PT&APTTともに延長します(特にPT)。
4) 肝不全:凝固因子は全て肝で産生されます。肝不全では、全ての凝固因子が低下します。PT&APTTともに延長します(特にPT)。
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血友病
(続く)
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