PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
参考書籍:「臨床に直結する血栓止血学」(INRなど凝固検査の内容も充実しています)
第21回日本検査血液学会学術集会(金沢2020年):血栓止血関連プログラムも豊富です。
参考書籍:しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編 ← クリック
PT-INR(あるいは、単にINR)検査について、研修医や医学部学生の皆さんからよくご質問をうけます(参考:PT-INR検査 ← クリック)。
INRは、ワルファリン(商品名:ワーファリン)コントロール時に用いられている検査項目です。
関連記事:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
抗血栓療法、抗血小板療法、抗凝固療法(アスピリン、ワーファリン)
INRというと、特殊な検査と勘違いされることがあるようですが、検査している中身はプロトロンビン時間(prothrombin time:PT)と同一です。PTを測定して、ある換算式により、INRに換算します。
ですから、PTの検査を行いますと自動的にINRが算出されます。念のため書かせていただきますが、PTを測定して、それとは別にINRを測定するという訳ではありません。
「PTという凝固時間」のみを測定すれば、自動的に「INR」が算出されます。測定機器が勝手にPTからINRへの換算を計算してくれています。
PTが正常であれば、INRは1.0になります。
PTが延長するほど、INRは高値になります。
疾患にもよりますが、INR 2.0〜3.0 でワーファリンコントロールすることが多いです。INRはワーファリンコントロール用のマーカーという印象が強いと思いますが(確かにこの目的で使用していますが)、当然ながらPTが延長する疾患では、INRは高値になります。
INRが高値となる(=PTが延長する)疾患
1)ワーファリン内服中:ワーファリンはビタミンKの拮抗薬です。
2)ビタミンK欠乏症
3)肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など)
4)凝固第VII、X、V因子、プロトロンビン(=凝固第II因子)、フィブリノゲン(=凝固第I因子)の欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター。
INRという表現にだまされないようにしましょう。
プロトロンビン時間(PT)と全く同じことを、違う表現で言っているだけです。
(補足)
【PT-INRとトロンボテスト(TT)のどっちが良い?】
現在はワーファリンのコントロール用検査には、INR(PT-INR)が主流になっていると思いますが、かつてはトロンボテストが主流であった時代があります。
それでは、INR とトロンボテストのどちらを用いた方が良いのでしょうか?多くの人に受け入れられる答えは、INR になります。INRですと施設間差がなく、インターナショナルで使用できるメリットがあります。トロンボテストでコントロールしているのは、世界の主流からは外れているかもしれません。
世界的な英語の論文を見ても、トロンボテストという単語はでてきません。トロンボテストでは世界から相手にされないことになります。
しかし、管理人は上記の点を承知の上で、トロンボテストによるコントロールを行っています。なぜなら、ワーファリンのコントロール領域では、INRよりもトロンボテストの方が遥かに精度が良いことを実感しているからです。もちろん、このような内容を記載しますと反論が多数でそうです。ブログならではの記載ということでお許しいただければと思います。
なお、INRとTTの対応は以下の通りです。
INR 2.0 = TT 17%
INR 3.0 = TT 9%
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 20:07| 抗凝固療法 | コメント(0)