金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年5月21日

ヘパリン在宅自己注射療法(インデックス)

<ヘパリン在宅自己注射療法>インデックス

1)抗リン脂質抗体症候群に対するヘパリン皮下注

2)慢性DICに対するヘパリン皮下注

3)ヘパリン在宅自己注射療法の適応と指針


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37 | 抗凝固療法

2015年5月20日

ヘパリン在宅自己注射療法:学会からの適応と指針

<ヘパリン在宅自己注射療法の適応と指針>

ヘパリン在宅自己注射療法(インデックス)


平成23年9月に日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科・新生児血液学会、日本血栓止血学会の4学会が「ヘパリン在宅自己注射療法の適応と指針」を厚生労働省に提出し、平成 24 年 1 月にヘパリン在宅自己注射が保険収載された経緯があります。

ヘパリン在宅自己注射療法の適応と指針.公益社団法人日本産科婦人科学会,公益社団法人日本産婦人科医 会,日本産婦人科・新生児血液学会,一般社団法人日本血栓止血学会,2011. http://www.jsognh.jp/common/files/society/demanding_paper_07.pdf

一部のみ、こちらで抜粋して紹介したいと思います。

正式には、必ず上記サイトをご覧いただきたいと思います。


ヘパリン在宅自己注射療法の適応と指針
(上記サイトより一部のみ抜粋)

目的および意義


ヘパリン在宅自己注射の目的は、通院の際に生じる身体的、時間的、経済的負担を軽減させ、患者により質の高い社会生活を送らせることである。

特に対象となる妊婦や血栓性素因を持つ患者にとって、毎日朝夕2回の通院は大きな負担となっており、ヘパリン在宅自己注射が是非とも必要である。


適応基準(以下の(1)〜(6)すべてを満足していること)

(1)ヘパリンに対してのアレルギーがなく、HITの既往がないこと。

(2)他の代替療法に優る効果が期待できるヘパリン治療の適応患者であること。

(3)在宅自己注射により通院の身体的、時間的、経済的負担、さらに精神的苦痛が軽減され、生活の質が高められること。

(4)以下の1)〜3)のいずれかを満足し、担当医師が治療対象と認めた患者

1)血栓性素因(先天性アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、APSなど)を有する患者

2)深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症既往のある患者

3)巨大血管腫、川崎病や心臓人工弁置換術後などの患者

(5)
患者ならびに家族(特に未成年者の場合)が、目的、意義、遵守事項などを十分に理解し、希望していること。

(6)
医師、医療スタッフとの間に安定した信頼関係が築かれていること。


患者教育:省略


患者の遵守事項:省略


方法

(1)皮下注射用ヘパリンを1回につき5,000単位、12時間ごと(1万単位/日)に皮下に自己注射する。

(2)注射部位は、腹部、大腿、上腕とする。


認可(自己注射療法開始条件):省略


管理と記録
:省略


ヘパリン在宅自己注射療法(インデックス)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22 | 抗凝固療法

2015年5月16日

慢性DIC:ヘパリン皮下注、新規経口抗凝固薬(NOAC)

<慢性DICに対するヘパリン皮下注>

ヘパリン在宅自己注射療法(インデックス)


大動脈瘤、巨大血管腫、緩徐に進行する癌などで慢性DICを合併した場合に、DICの合併のために退院できない場合があります。

そのような場合に、ヘパリン在宅自己注射は優れた治療選択肢となります。

DICにおいては基質としての凝固因子を低下させてもDICの本態である凝固活性化を抑制することができませんが、活性型凝固因子(トロンビンや活性型第X因子など)を抑制して初めてコントロールが可能です。

実際、DICに対してワルファリン(基質としてのビタミンK依存性凝固因子を低下させる薬剤)を投与すると無効であるばかりでなく、大出血の合併症がみられることがあり、禁忌です。

また、劇症肝炎は凝固因子が枯渇する病態ですがやはりDICを発症します。


活性型凝固因子を阻止する薬剤としては、ヘパリン類が知られています。

在宅で治療する場合には通常ヘパリン5000単位を1日2回皮下注します。

ただし、低体重、腎障害合併例では減量して用います。


大動脈瘤、巨大血管腫では線溶亢進型DICを合併することが特徴的であり、臓器障害よりも出血症状が見られやすいです(ただし、動脈瘤などではDICではなく基礎疾患に起因する腎障害をきたすことがあります)。

ヘパリン在宅自己注射を導入する場合には、必ず入院の上、出血の副作用がみられないかチェックする必要があります。

なお、線溶亢進型DICの典型例ではヘパリンのみではなくトラネキサム酸(商品名:トランサミン)を併用した方が出血症状に対して有効な場合がありますが、トラネキサム酸は致命的な血栓症を誘発することもあるため、必ず専門家にコンサルトすべきです。

前述のように、DICに対してワルファリンは禁忌ですが、新規経口抗凝固薬(NOAC)はトロンビンまたは活性型第X因子を直接抑制するためにDICに対して有効である可能性があります

保険適応がないため現時点では使用できませんが、検討の価値があります。


朝倉英策. 新規経口抗凝固薬(NOAC). 朝倉英策・編. 臨床に直結する血栓止血学. 東京:中外医学社; 2013. pp.321-329.

Hayashi T, et al.: Rivaroxaban in a Patient with Disseminated Intravascular Coagulation Associated with an Aortic Aneurysm. Ann Intern Med, 15: 158-159, 2014.


ヘパリン在宅自己注射療法(インデックス)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09 | 抗凝固療法

2015年5月15日

抗リン脂質抗体症候群と妊娠:アスピリン内服 & ヘパリン皮下注

<抗リン脂質抗体症候群に対するヘパリン皮下注>

ヘパリン在宅自己注射療法(インデックス)


抗リン脂質抗体症候群(APS)は、動・静脈血栓症または不育症(習慣性流産を含む)といった臨床症状がみられ、かつ、抗カルジオリピン抗体(特にβ2GPI依存性のもの)またはループスアンチコアグラントのうち1項目以上が陽性の場合に診断される、最も高頻度にみられる後天性血栓性素因です。

本疾患に対しては、ワルファリンによる抗凝固療法が血栓症発症の二次予防に有効と報告されていますが、ワルファリンには催奇性の副作用があるため挙児希望の若年女性に対しては使用できません。

在宅環境であるにもかかわらず、抗凝固療法として本来は簡便である経口薬ワルファリンを使用できない(ヘパリン皮下注を行わざるを得ない)理由としては、挙児希望の女性におけるワルファリンの催奇形性の問題が大きいです。

この点、ヘパリン在宅自己注射(皮下注)は、挙児希望のAPS女性に対して最も大きい意義を有しています。


APSにおける不育症の機序はいくつか報告されていますが、胎盤内における血栓形成は大きな機序の一つであり、抗血栓療法は理にかなった治療です。


APSにおける不育症(習慣性流産を含む)対策としては、低用量アスピリン(経口)&ヘパリン(皮下注)併用療法が標準的治療として確立されています。

当科では、APSの診断がなされた場合には挙児希望があった時点よりアスピリン(100mg/日)の内服を開始し、妊娠成立時点でヘパリン(5000単位を12時間ごとに皮下注)の自己注射を開始しています。

アスピリンは妊娠36週まで内服し(出産1週間前まで投与することもあります)、ヘパリン皮下注は分娩前日までの投与を原則としていますが、よりリスクが高い症例では分娩前よりへパリン持続点滴に切り替え、分娩4〜6時間前に中止する方法をとっています。


アスピリン&ヘパリン併用療法以外にも、アスピリン単独投与の有用性の報告もあります。

実際、APSの病勢が低いと考えられる症例などでアスピリン単独療法が行われることも多いと思われます。


アスピリンは胎盤を通過し、その血小板機能抑制作用は約1週間持続します。

胎児における動脈管早期閉鎖などの先天異常の可能性については欧米の報告で否定されていますが、内服時期によっては分娩時の出血量の増加につながるとの報告もあります。

本邦では、添付文書上、「出産予定日12週以内の妊婦には投与しないこと」と記載されており、アスピリン投与についてはその投与期間についても十分な説明と同意が必要です。

2012年よりヘパリンカルシウムの在宅自己注射が保険適用となり、APS合併妊婦を取り巻く医療環境は医療費および保障の面でも大きく前進しました。

ただし、長期にわたるヘパリン皮下投与は精神的にも手技的にも患者負担の大きい治療であることに変わりはないです。

医師による指導のみならず、産科医療に携わるすべてのスタッフの理解と協力が必要と考えられます。

 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55 | 抗凝固療法

2015年2月11日

抗凝固療法とPOCT:ワルファリンと新規経口抗凝固薬(NOAC)

スライド41


簡便なPOCTによるPT-INRの測定が行われていると思います。
大がかりな検査部施設がなくても、診察室レベルでも測定可能なために大変に便利です。

ただし、重要な注意点があります。
このPOCTによるPT-INRの測定はあくまでもワルファリンコントロール目的です。

新規経口抗凝固薬(NOAC)
対応ではありません。

上図のように同じ患者さんの同じ検体であっても、検査部でのデータとPOCTでの測定結果は大きくことなっています(検査部での測定結果の方が正しいです)。

この論文は海外からのものでHemochronというPOCTで測定されています。
日本ではコアグチェックというPOCTが普及していると思いますが、ワルファリン対応であって、NOACには保証されていない点に注意が必要です。

 
 
 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50 | 抗凝固療法

2015年2月10日

心房細動治療ガイドライン:ワルファリン、NOAC

スライド38


上図は、心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)です。

本記事では、紹介だけにとどめさせていただきます。
実際の治療にあたっては、かならずこのガイドラインそのものをご覧いただければと思います。
(この図のみでは、治療を行うことはできませんのでご了解お願いいたします)

注目されるのは、CHADS2スコアが1点であった場合です。
ワルファリンは考慮可に留まりますが、NOACであれば、推奨になっている点です。
やはり、NOACは出血の副作用が少ないために、CHADS2スコアが1点であっても処方するメリットの方が大きくなるということだと思います(ワルファリンは出血の副作用のデメリットが、効果のメリットと比較して優位にならないということだと思います)。


このガイドライン作成時には、リバーロキサバンやエドキサバンは、CHADS2スコアが1点のエビデンスがなかったために考慮可に留まっていますが、管理人はその他のNOACとあまり変わらないのではと理解しています。

 
 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51 | 抗凝固療法

2015年2月9日

心房細動に対する新規経口抗凝固薬とSFの変動

スライド37

これは、心房細動の、大変に興味ある症例報告です。

左心耳内血栓が、新規経口抗凝固薬(NOAC)の一つであるアピキサバン(商品名:エリキュース)を使用することで完全に消失しています。

この臨床経過も興味深いのですが、管理人がさらに興味深いと思うのは、血栓止血関連マーカーの推移です。

まず、アピキサバンですので、PT、APTTはほとんど変動(延長)していません。

可溶性フィブリン(SF)は、一貫して低下しています。
さて、D-ダイマーですが、一旦上昇した後に低下しています。
SFと平行して動いているわけではない点が注目されます。
D-ダイマーは形成された血栓が分解されたときに血中濃度が上昇します。
つまり、SFは低下して凝固活性化に抑制がかかって、その後に遅れて血栓が溶解したことになります。

本症例は、D-ダイマーとSFが同じ動態を示していないことから、両マーカーの異なった意義を示した点でも貴重な症例報告と考えられます。

 

 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34 | 抗凝固療法

2015年2月8日

新規経口抗凝固薬(NOAC):効果と副作用のモニタリング

スライド36

抗凝固療法のモニタリングは、効果と副作用(出血)の両面から考える必要があります。
一つのマーカーで効果も副作用もチェックできれば良いのですが、抗凝固療法の場合はそうはいきません。

ワルファリンのモニタリング法は、既に記事にさせていただきました。
効果の判断はD-ダイマーやF1+2が良いでしょう。出血の副作用のチェックPT-INRになるでしょう。
トロンボテスト(TT)はある意味ではPT-INR以上に優れたマーカーですが、最近はあまりモニタリングに使用されなくなってきているかも知れません。

新規経口抗凝固薬(NOAC)は、効果判定にはD-ダイマーは候補にあげたいところです。
D-ダイマーは、大変に安定感のあるマーカーです。
ただし、心房細動でのD-ダイマーの変動は鈍感なところもあります。
より鋭敏なマーカーである、可溶性フィブリン(SF)などのマーカーにも期待したいところです。
出血の副作用チェックには、PT、APTTを候補にあげたいと思います。

心房細動が動脈硬化を基盤にしている場合があるとしますと、同じく動脈硬化を基盤に動脈瘤を合併していることもあるかもしれません。動脈瘤は慢性DICの原因になりえます。

抗凝固療法を開始する前には、DICの合併の有無をチェックするために、一度はフィブリノゲンやFDP(D-ダイマー)をみておきたいところです。
DICの合併があれば、出血に対する注意がさらに大切になってきます。


いずれのマーカーも1回のみの測定ではなく、定期的にチェックしたいところです。

新規経口抗凝固薬のモニタリングでは、測定周期をどうするかはいろんな意見があると思いますが、3〜4ヶ月くらいの周期でしょうか(ワルファリンのように毎回は必要ないと思います)。

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52 | 抗凝固療法

2015年2月7日

新規経口抗凝固薬(NOAC):モニタリングの一法

スライド32

 

新規経口抗凝固薬(NOAC)のモニタリングをどうするかは、今後の検討が必要ではないかと考えられます。

上図ではモニタリングの考え方の一法を示しています(あくまでも一つの考え方ということで紹介させていただきます)。

ダビガトランでは、PTよりもAPTTの方が延長しやすいために、APTTでモニタリングします。

リバーロキサバンでは、APTTよりもPTの方が延長しやすいために、PTでモニタリングします。

図ではカットオフ値でふるい分けがなされていますが、カットオフ値をどうするのかは用いる試薬によっても変わってきて悩ましい問題です。

アピキサバンは、PTもAPTTも延長しにくいために、これらのマーカーではなく、抗Xa活性でモニタリングしようというものです。
ただし、抗Xa活性の測定は我が国では保険収載もされていませんし、臨床の現場ではほとんど使用されていません。

エドキサバンは上図では、抗Xa活性での測定を提案しています。
ただし、管理人の経験では、エドキサバンはPTが延長しやすい印象をもっています(用いる試薬にもよります)。

いずれにしましても、新規経口抗凝固薬(NOAC)のモニタリングは今後の重要な検討課題ではないかと思います。




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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39 | 抗凝固療法

2015年2月6日

新規経口抗凝固薬(NOAC)のモニタリング(PT、APTT)

スライド35

新規経口抗凝固薬(NOAC)は、当初はワルファリンのような毎回のモニタリングは必要ないことをメリットにしていました。

しかし、NOACは抗凝固療法の治療薬であり出血の副作用を伴う可能性があるにもかかわらず、モニタリングが不要というのは大変に違和感があります。

PT、APTTで出血の副作用がでないかどうかのモニタリングが必要と考えられます。

いろんな考え方があるとは思いますが、やはりNOACの血中濃度がピークの時点であっても、PT、APTTの延長が想定範囲内であることを確認すべきでしょう(トラフでPT、APTTが想定以上に延長していたら問題外です)。

NOACの種類によって、PTが延長しやすい薬剤と、APTTが延長しやすい薬剤があります。
延長しやすい方のみのチェックで良いのでしょうか?
いいえ、そうではないでしょう。
APTTが延長しやすいNOACであったとしても、PTもチェックしたいです。ワルファリンとNOACの併用というとんでもないことが起きても、すぐに見抜くことができます(APTTでは見抜けないです)。

逆に、PTが延長しやすいNOACであったとしても、APTTもチェックしたいです。隠れvon Willebrand病(VWD)を見抜くことができるでしょう。

ただし、PT試薬、APTT試薬に何を用いるかによって、データはまるで変わってきます。
NOACと自施設のPT、APTTとの相性をしっておく必要があります。


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15 | 抗凝固療法

2015年2月5日

ワルファリンとNOACの比較

スライド33
心房細動に対して、抗凝固療法(ワルファリン、新規経口抗凝固薬)を行う場合に、それぞれにメリットとデメリットがあります。

新規経口抗凝固薬(NOAC)(ダビガトラン、リバーロキサバン、エドキサバン、アピキサバン)は、ワルファリンと比較して、効果は同等以上で、出血の副作用(特に頭蓋内出血)は有意に少ない点は大きなメリットです。

しかし、NOACにもワルファリンにもそれぞれ長所と短所があります。上図でまとめてみました。


上図の他にもあります。
ワルファリンは、怠薬がまれにあっても大きな問題はないですが(効果が激減することはないですが)、NOACは半減期が短く1回の怠薬がありますと全く効果が発揮されない日を生じてしまいます。
NOACは怠薬厳禁と言えます。

外来診療の場で、ワルファリンとNOACの選択肢を患者さんにお話する際に、上記の全てをお話するには物理的に難しいかもしれませんね。

管理人は、NOACはワルファリンと比較して効果は同等以上であるにもかかわらず出血の副作用は有意に少ないこと(NOACのメリット)、NOACは怠薬のダメージが大きいこと、NOACは高価であること(NOACのデメリット)は必ずお伝えするようにしています。

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39 | 抗凝固療法

2015年2月4日

心房細動とアスピリン、ワルファリン、新規経口抗凝固薬

スライド34


上図は、心房細動に対して抗血栓療法を行った場合の脳卒中低減率を図にしたものです。

心房細動に対しては抗血小板療法ではなく抗凝固療法が有効であることが知られています。
ただし、全く無効という訳ではなく、プラセボよりは有効です(一番左の棒グラフ)。

アスピリン単独と、アスピリン&クロピドグレル(プラビックス)併用を比較したのが、左から2番目の棒グラフです。併用の方が良いようです。

しかし、アスピリン&クロピドグレルの併用療法と比較して、ワルファリン単独は遥かに有効です(左から3番目の棒グラフ)。
心房細動に対するワルファリン療法は、いわばゴールデンスタンダードと言えるでしょう。
このゴールデンスタンダードを、上図では赤線で示してみました。

これに対して、新規経口抗凝固薬(NOAC)(上図では、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)は、ゴールデンスタンダードのワルファリンを上回る効果です。
NOACパワーは素晴らしいですね。

なお、それぞれ違った背景での臨床試験ですので、棒グラフを横同士で比較してはいけませんので、注意していただければと思います。

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55 | 抗凝固療法

2015年2月3日

心房細動への新規経口抗凝固薬(NOAC)と頭蓋内出血

スライド40


心房細動に対して抗凝固療法を行った場合に、新規経口抗凝固薬(NOAC)がワルファリンと比較して圧倒的に優れているのは、出血の副作用、特に頭蓋内出血が少ないことを挙げることができるでしょう。

上図はダビガトランを例にとっていますが、その他のNOACでもほぼ同様の結果です。

抗凝固療法、抗血小板療法といった抗血栓療法の避けられない副作用として、出血があります。
出血の副作用は、抗血栓療法の宿命ともいえるでしょう。

抗血栓療法は止血機序を阻止しますので、当然の結果として出血しやすくなります。


ワルファリンと効果が同等以上であることを期待できるにもかかわらず、出血の副作用、特に最も致命的な出血である頭蓋内出血が少ないというのは、極めて大きなメリットといえると思います。

 

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2015年2月2日

心房細動への新規経口抗凝固薬(NOAC)の効果

スライド39

 

 

心房細動症例に対して、新規経口抗凝固薬(NOAC)を投与した場合、脳卒中/全身性塞栓症の発症抑制効果はワルファリンと比較して同等以上です。

上図ではNOACの中でも、ダビガトラン(プラザキサ)を例に結果を示しています。
その他のNOACに関しても、効果が同等以上であるという点に関しては共通していると思います。

後述するように、NOACは、多剤との相互作用がワルファリンと比較してはるかに少ないこと、モニタリングが必要であるにしても毎回は必要ないこと、食事制限がないことなど多くのメリットがあります。
ワルファリンよりも使用しやすい薬剤といえるでしょう。

使用しやすく効果がワルファリンと効果が同等以上ですので、新たに経口抗凝固療法を行う症例では、NOACを処方する機会が多くなるのではないかと推測されます。
 
 
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2015年2月1日

ワルファリンとNOACの相違点

スライド31


新規経口抗凝固薬(NOAC)は、心房細動に起因する心原性脳梗塞の予防目的に使用することが可能になりました。

エドキサバン(リクシアナ)は、静脈血栓塞栓症(VTE)にも使用可能です(平成27年1月現在)。今後その他のNOACもVTEに使用可能となるものが出てくるでしょう。

従来は、経口抗凝固薬と言えば、ワルファリンのみでしたが、NOACの登場によって、経口抗凝固療法の選択肢が一気に増加しました。

NOACは、抗トロンビン作用を有したものと、抗Xa作用を有したものがありますが、いずれにしても活性型凝固因子を阻止します。

ワルファリンは、活性型凝固因子を阻止する作用は全くありませんが、基質としての凝固因子(半減期の短い順番に、VII、IX、X、II)を低下させます。

NOACは活性型凝固因子を抑制するのに対して、ワルファリンは基質としての凝固因子を抑制します。この点がNMOACとワルファリンの決定的な違いです。


究極の血栓症ともいえる播種性血管内凝固症候群(DIC)に対してワルファリンを投与しますと大出血をきたします。DICに対してワルファリンは禁忌です。

DICをコントロールするためには基質としての凝固因子を抑制しても全く無効どころか大出血を誘発するのみです。凝固因子の枯渇した劇症肝炎でもDICを発症することからも理解できます。


DICをコントロールするためには、ヘパリンのように活性型凝固因子を抑制する必要があります(このことで初めて凝固活性化にブレーキをかけることができます)。この点、NOACはDICに対して有効である可能性があります。

DICに対する効果が、ワルファリンとNOACではまるで正反対と考えられます。
このように、ワルファリンとNOACは異質の薬剤と言うことができるでしょう。

 

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2015年1月31日

新規経口抗凝固薬(NOAC):new, novel or non-VKA、DOAC

スライド28

経口可能な抗凝固薬としては、長年にわたりワルファリンのみが用いられてきました。

近年、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)、エドキサバン(商品名:リクシアナ)、アピキサバン(商品名:エリキュース)といった新規経口抗凝固薬が続々と登場して、ワルファリンに代わる画期的な経口抗凝固薬として、大変に期待されています。

大規模臨床試験の結果から、これらの薬物はワルファリンより効果の点で同等以上であり、副作用(特に頭蓋内出血)も少ない点で期待が寄せられました。

また、ワルファリンのように頻回の採血によるモニタリングが必要ない点が最初のころはキャッチフレーズとなりました(ただし、後述のようにやはりモニタリングは重要と考えられます)。

当初、new oral anti-coagulant(略称:NOAC)と言われていましたが、いつまでもnewというのは違和感がありますので、novel oral anti-coagulantnon-VKA oral anti-coagulantとも言われています。いずれも、NOACになります。

NOACの通りが良いので、NOACの略称になるように、newを変えていったという要素もあるかも知れません。

あるいは、アンチトロンビン非依存性に活性型凝固因子を抑制しますので、direct oral anti-coaglantDOAC)という表現の仕方もあります。

これらの新規経口抗凝固薬は、循環器領域、脳卒中領域、血栓止血・血液内科領域、血管外科/内科領域、臨床検査医学領域などいろんな領域で話題になっています。

新規経口抗凝固薬は、人類が待ち望んだ優れた薬物だと思います。

これらの薬物が大きく育つためにも、モニタリングの意義も大きいのではないかと考えられます

<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59 | 抗凝固療法

2014年10月19日

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(インデックス)

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(インデックス)


<インデックス

1)血栓症の分類

2)治療の考え方

3)アスピリン

4)ワルファリン

5)モニタリング


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:21 | 抗凝固療法

2014年10月18日

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):モニタリング

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(5)

がん患者と抗血栓療法のインデックス


<抗凝固療法のモニタリング

抗凝固薬のうち経口薬であるワルファリン、注射薬であるヘパリンともにモニタリングを適切に行うことで安全かつ効果的な治療を継続できます。

その際、効果、安全性の両面からの評価は肝要です。

新規経口抗凝固薬はまだ定まったモニタリング法はないため、表では私案として記載しました。

 

薬 剤 効 果 副作用(出血)
未分画へパリン FDP、Dダイマー、TAT、SFなど APTT(通常1.5〜2.0倍)(※1)
低分子へパリン FDP、Dダイマー、TAT、SFなど APTT(常用量では延長しない)
ダナパロイド FDP、Dダイマー、TAT、SFなど APTT(常用量では延長しない)
ワルファリン F1+2、Dダイマー、TAT、SFなど PT-INR(通常2.0〜3.0)(※1)
新規経口抗凝固薬 F1+2、Dダイマー、TAT、SFなど PT、APTT(※2)
アスピリン(※3)
な し な し


TAT:thrombin-antithrombin complex(トロンビン-アンチトロンビン複合体)

SF:soluble fibrin(可溶性フィブリン)

F1+2:prothrombin fragment 1+2(プロトロンビンフラグメント1+2)


(※1)

APTTが1.5〜2.0倍に延長していても効果を発揮しているとはかぎらない。

APTTが過度に延長している場合には出血のリスクがあると考えるべきである。

APTTが1.5〜2.0倍の状態でかつ効果判断のマーカーをチェックしたい。

PT-INRについても同様に判断する。


(※2)

新規経口抗凝固薬(NOAC)

ダビガトランはAPTTの方が延長しやすい。

イグザレルト、エドキサバンはPTの方が延長しやすい。

アピキサバンはいずれも延長しにくい。

ただし、用いる試薬によって感受性が大きく異なるため注意を要する。

いずれのNOACともに内服2〜3時間後に血中濃度がピークとなるが、そのポイントでのPT、APTTの延長が想定範囲内であることを確認する。

万一、トラフでのPT、APTTが明らかに延長していれば出血のリスクがある。


(※3)

アスピリンなどの抗血小板薬のモニタリングは研究室レベルではいくつか試みられているが、臨床の場で簡便にチェックできるマーカーはない。


(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52 | 抗凝固療法

2014年10月17日

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):ワルファリン

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(4)

がん患者と抗血栓療法のインデックス


<がん患者におけるワルファリン治療

がん患者でワルファリン(ビタミンK(VK)拮抗薬)治療が行われているのは、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)といった静脈血栓塞栓症(VTE)や心房細動などに罹患していたためにがん発症以前よりワルファリンを内服していた場合と、がんという血栓症の危険因子を発症したためにがん診断時または治療経過中にVTEを発症した場合があります。

いずれの場合であっても、がん化学療法とワルファリン治療が併行して行われている場合には次のような注意点があります。

1)    抗がん剤のなかには、ワルファリンの効果に影響を与えるものが少なくないため、その都度薬物相互作用の確認が必要です。

2)    抗がん剤治療に伴って食欲低下をきたすとVKの摂取も低下するため、ワルファリン過剰投与になります。

3)    抗がん剤治療により白血球数低下をきたし感染症を併発し抗生剤が投与されると、VK産生源である腸内細菌も死滅するため、ワルファリン過剰投与になります(NSAIDの併用があればさらに影響が大きいです)。

4)    肝胆膵悪性疾患(腫瘍)に伴う胆道閉塞やPTCD(経皮経肝胆管ドレナージ)のために胆汁排泄の低下をきたすと、ワルファリン過剰投与になります(VKは脂溶性ビタミンのために吸収のために胆汁が必要です)。


PT-INRを通常よりも頻回にチェックしてワルファリン用量を調整する必要があります。

化学療法に伴い食事摂取量が極端に低下することが予想される場合には、あらかじめ1週間程度ワルファリン用量を減量した上でPT-INRを追跡するのも一法です。

あるいは、入院中はヘパリンの皮下注または半減期の長いヘパリン類であるダナパロイドなどの注射薬で抗凝固療法を行い、外来移行の計画が決まった時点で退院2週間くらいまえからワルファリンへ移行するのも良いでしょう。

また、がん患者ではワルファリンの効果が不十分になりやすいことが知られているために、ワルファリンコントロール不良の如何にかかわらず入院中はヘパリン類でコントロールするという考え方もあります。

Prandoni P, et al. Recurrent venous thromboembolism and bleeding complications during anticoagulant treatment in patients with cancer and venous thrombosis. Blood. 2002; 100: 3484-88.

Akl EA, et al. Anticoagulation for the long-term treatment of venous thromboembolism in patients with cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2014; 7: CD006650.

(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42 | 抗凝固療法

2014年10月16日

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):アスピリン

がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(3)

がん患者と抗血栓療法のインデックス


<がん患者における抗血小板療法

虚血性心疾患や脳梗塞などに対してアスピリンなどの抗血小板薬内服中のがん患者において問題になるのは、化学療法や放射線療法に伴い血小板数が低下した場合に、抗血小板薬を継続できるかどうかの判断です。

この問題点を解決するエビデンスとなるような臨床試験は存在しませんが、通常血小板数が3〜5万/μL以上であれば、抗血小板療法を継続できる場合が多いです。

一方、血小板数が3〜5万/μL未満となった場合には、抗血小板療法を継続することのメリット(動脈血栓症の予防)とデメリット(出血の副作用)を比較して慎重に判断することになります。

なお、一般的には、血栓症では致命的になることが少なくないですが、出血の副作用で致命症になるのは例外的です。


判断に迷った場合には、血栓症対策に比重をおく方が良い場合が多いです。

(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34 | 抗凝固療法

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