ヘパリン類 : フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ
ヘパリンと言えば、血栓症の治療、予防目的の注射薬としてなくてはならない重要なお薬です。
以前は、ヘパリンと言えば、未分画ヘパリン(標準ヘパリン)のみの時代がありましたが、現在は多くの類似薬が使用可能となっています。
そのため、「ヘパリン類」の言い方が普及しています。
現在、日本で使用可能なヘパリン類の種類と特徴について記事に致します。
ヘパリン類の種類と特徴
1. 未分画ヘパリン(標準ヘパリン)
・適応症:DIC、体外循環の血液凝固防止(透析)、血栓症の予防・治療
・抗Xa/トロンビン比:1対1
・半減期:0.5 〜1時間
・用法:臨床の場での実情は、5,000〜10,000単位/24時間持続点滴(DIC)。教科書的には、5〜10単位/kg/時間持続点滴(DIC)
2. 低分子ヘパリン
1) ダルテパリン(商品名:フラグミンなど)
・適応症:DIC、血液体外循環時の還流血液の凝固防止(欧米ではDVTも)
・抗Xa/トロンビン比:2 〜 5 対1
・半減期:2〜4時間
・用法:75単位/kg/24時間持続点滴(DICの場合)
2) エノキサパリン(商品名:クレキサン)
・適応症:下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制(股関節全置換術 、膝関節全置換術、股関節骨折手術)
・抗Xa/トロンビン比:2 〜5 対 1
・半減期:2 〜 4 時間
・用法:2,000 (20mg) IU ×2 回皮下注(術後DVT予防として)
3. ダナパロイド(商品名:オルガラン)
・適応症:DIC(欧州ではDVTも)
・抗Xa/トロンビン比:22 対 1
・半減期:20 時間
・用法:1,250単位×2 回静注(DIC)
4. フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)
・適応症:下肢整形外科及び腹部外科術後の静脈血栓塞栓症発症抑制
・抗Xa/トロンビン比:7,400対1
・半減期:17 時間
・用法:2.5mg (1.5mg)×1回皮下注(術後 2 週間程度)
(ポイント)
1) 抗Xa/トロンビン比の高い薬物は、出血の副作用が少ないと考えられています。
2) オルガランとアリクストラは半減期が長いことも特徴です。そのため、24時間持続点滴で患者様を拘束しなくて良い点が特徴になります。逆に、出血の副作用が少ないとは言っても、万一出血した場合には、薬剤を中和できない点が短所になる場合もありえます。
3) 上記の注射薬のなかで、アリクストラ、クレキサンの2薬は、術後静脈血栓塞栓症の予防目的(治療目的でなく)に使えるという意味で、まさに画期的な薬剤と言えます。
4) オルガランは日本ではDICに対してのみの適応ですが、欧州では静脈血栓塞栓症に対しても使用されています。
5) 他の優れたヘパリン類が存在する現在、未分画ヘパリン(標準ヘパリン)の医学的なメリットはないと言えます。ただし、医学以外の観点からは、安価である点が唯一のメリットです。これが、臨床の現場から、未分画ヘパリン(標準ヘパリン)が撤退しない理由と考えられます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:26| 抗凝固療法 | コメント(0)