金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年09月21日

【医師国家試験過去問題】下肢の腫脹

医師国家試験過去問題

25歳の男性。突然の左下肢全体の腫脹と疼痛とを主訴に来院した。昨夜、飲酒後に就寝したところ、明け方に痛みのため覚醒し、次第に左下肢が腫大してきた。体温36.5度。下肢に明らかな感染巣を認めない。左下肢は腫脹し、一部暗赤色の発赤を認める。最も考えられる病態はどれか。

a. 特発性浮腫
b. リンパ流障害
c. 深部静脈血栓症
d. 血小板減少に伴う出血
e. 凝固因子異常に伴う出血


この臨床問題には、さりげなくキーワードが多数散りばめられている。

(キーワード)
1)    突然:脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓などの血栓症を連想しても分かるように、血栓症の重要なキーワードの一つに、突然発症がある。
2)    左下肢の腫脹:両側ではなく、片側のみである点がポイント。ある日突然、片側下肢のみの腫脹といえば、もう回答となる疾患くらいしか思いつかないかも知れない。
3)    前日の飲酒:これはあまり直接関係ないかも知れないが、飲酒は利尿作用があり脱水の原因になる。そのため、血液粘度が上昇し血栓症を誘発する懸念がある。
4)    体温36.5度:敢えて書いてあるのは、感染性疾患ではないという暖かいヒント。加えて、感染巣がないとまで念押しがある。
5)    一部暗赤色の発赤:血流遮断に伴って、血液が血管外にリークしたためと考えられる。

(答)C



(内科専門医試験対策)
深部静脈血栓症の危険因子
1)脱水・多血症 
2)肥満 
3)妊娠 
4)下肢骨折・外傷、手術
5)下肢麻痺、長期臥床、ロングフライト
6)癌 
7)心不全、ネフローゼ症候群
8)経口避妊薬
9)深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往
10)血栓性素因
11)その他:近年、話題になりやすい地震災害時の深部静脈血栓症/肺塞栓も理解しておく必要がある。地震災害時には、脱水、ストレス、不動(車中泊を含む)が、誘因となっている。弾性ストッキングの装着が勧められる。



(血液専門医試験対策)
深部静脈血栓症の血液学的血栓性素因

1.先天性凝固阻止因子欠乏症
       アンチトロンビン欠乏症
       プロテインC欠乏症
       プロテインS欠乏症

2.線溶異常症
       プラスミノゲン異常症、高Lp(a)血症
       (Lp(a)は、線溶因子であるプラスミノゲンと類似した構造を有し、拮抗的に作用する)

3.後天性血栓性素因
       抗リン脂質抗体症候群
       (抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント)
       高ホモシステイン血症

特に、抗リン脂質抗体症候群は不育症(習慣性流産)とも関連して、出題されやすい。抗リン脂質抗体症候群の治療は、ワルファリンが有効というN Engl J Medの報告があるが、催奇形性の副作用があるため、挙児希望の女性には処方できない。

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:40| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)

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