金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2008年09月28日

スロンノン(アルガトロバン):合成抗トロンビン薬


アルガトロバン(合成抗トロンビン薬)

アルガトロバン(商品名:スロンノンなど)は、アンチトロンビン(AT)非依存性の合成抗トロンビン薬です。

保険適応上、脳血栓症急性期(ラクナ梗塞&心原性脳塞栓を除く)、慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症、バージャー病)、血液体外循環時(先天性AT欠損症や、AT活性が低下した患者において)における使用が認可されていました。

比較的最近の話題として、「ヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia:HIT)II型における血栓症の発症抑制」としても保険収載された点があげられます。


HITに対しては、スロンノン  0.7μg/kg/分より点滴静注を開始し持続投与するとされているため、例えば体重60kgの人では60mg/24時間で投与することになります。

本剤は肝代謝の薬剤であり、肝不全症例に対して投与する場合には血中濃度が著しく上昇(PT&APTTが著しく延長)することが知られており注意が必要です(減量あるいは他薬を考慮)。


実は、アルガトロバンは播種性血管内凝固症候群(DIC)に対する臨床試験が過去に行われていますが、出血の副作用が高頻度に見られたために断念された歴史があります。

当時のDICの臨床試験で用いられていたアルガトロバンの用量は、30mg/24時間程度ではなかったかと記憶しています。


DICとHITは、後天性血栓性素因である点で共通していますが、血小板数が低下する点でも共通しています。

HITに対してアルガトロバンを用いる場合には、出血の副作用に対する十分な注意が必要と考えられmす。

管理人の個人的な見解ですが、日本人のHITに対しては、欧米人に対する用量よりも、ずっと少ない量で良いのではないかと考えています(たとえば、体重60kgの人では、20mg/24時間)。

あくまでも個人的見解ということでお許しいただければと思います。

 

関連記事(リンクしています)

血管内皮と抗血栓作用

ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)

ヘパリン類の種類と特徴(表)

低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)

オルガラン(ダナパロイド )

アリクストラ(フォンダパリヌクス)

プロタミン(ヘパリンの中和)

スロンノン(アルガトロバン)

フサン(線溶亢進型DICに対する特効薬)

リコモジュリントロンボモジュリン製剤)

・NETセミナー:DICの病態・診断

・NETセミナー:DICの治療

 

血栓症の分類と抗血栓療法の分類

抗血小板療法 vs, 抗凝固療法(表)

PT-INRとトロンボテスト

・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング

ワーファリン

プラビックス:パナルジン、プレタール、プロサイリン、ドルナー、ワーファリンとの比較(納豆は大丈夫か?)

抗Xa vs. 抗トロンビン

深部静脈血栓症

ロングフライト血栓症

閉塞性動脈硬化症

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:02| 抗凝固療法 | コメント(0) | トラックバック(0)

◆この記事へのトラックバックURL:

http://control.bgstation.jp/util/tb.php?us_no=426&bl_id=391&et_id=23054

◆この記事へのコメント:

※必須