【金沢大学血液内科進級試験過去問題】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2005年)
(設 問)
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)の両者に共通した所見の記載として誤っているものはどれか。
a. 血清ハプトグロビンの低下
b. 血清LDHの上昇
c. ク−ムス試験陰性
d. 破砕赤血球の出現
e. ADAMTS13に対する自己抗体の出現
(ポイント)
a. TTP&HUSともに溶血のため、血清ハプトグロビンは低下する。
b. TTP&HUSともに溶血のため、血清LDHは上昇する。
c. クームス試験は、自己免疫性溶血で陽性となるが、TTP&HUSでは陰性。
d. TTP&HUSともに破砕赤血球が出現する。
e. ADAMTS13に対する自己抗体は、TTPでのみ出現する。
(内科専門医試験&血液専門医試験対策)
TTP、HUSは共通点している点も多く、血栓性微小血管障害症 (thrombotic microangiopathy, TMA)と総称されている。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の五主徴:
1)溶血性貧血
2)血小板数減少
3)腎障害
4)発熱
5)動揺性精神神経障害
溶血性尿毒症症候群(HUS) の三主徴:
1)溶血性貧血
2)血小板数減少
3)急性腎不全
TTPに特徴的な病態(HUSでは見られない)
TTPにおいては、von Willebrand 因子(VWF)の特異的切断酵素(VWF-cleaving protease, VWF-CP)(ADAMTS13とも言う)に対する自己抗体が出現し、ADAMTS13活性が低下する。
ADAMTS13は、unusually large VWF multimer (UL-VWFM)(強い血小板凝集作用を有する)を分解する作用を有している。TTPでは、ADAMTS13活性が低下しているため、このUL-VWFMが血中に存在し、血小板凝集が進行する。
TTPの本態は、ADAMTS13に対する自己抗体の出現という観点から、自己免疫性疾患と言えるが、HUSではこの機序はみられない。
TTPに対して、血漿交換が有効な理由
1) UL-VWFMが除去される。
2) ADAMTSに対する自己抗体が除去される。
3) ADAMTSが正常血漿により補充される。
(血液専門医試験対策)
先天性にADAMTS活性が低下している疾患(いわゆる先天性TTP)が知られており、Upshaw-Schulman症候群(USS)と称されている。
(答)e
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:09| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)