金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年10月16日

クロスミキシング試験(凝固因子インヒビター定性):混合試験 mixing test

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混合試験

 

クロスミキシング試験


凝固因子インヒビター定性
混合試験 mixing test



意義:

患者血漿と正常血漿を、例えば上図のような比で混合し、凝固時間(APTTなど)を測定するのが、クロスミキシング試験(混合試験)です。

凝固時間の延長が、凝固因子の欠損によるものか、凝固因子に対するインヒビター(ループスアンチコアグラントを含む)によるものかをスクリーニングする検査です。APTTなどの凝固時間の延長原因を究明する上で、最初のステップで行うべき大変重要な検査です。

なお、第VIII因子インヒビターのスクリーニング時には、血漿の混合後に2時間incubationする必要があります。

最近、保険収載されましたので、今後全国的に検査件数が増加するものと予想されます。APTTの院内測定を行っている医療機関であれば、クロスミキシング試験も院内で簡単に施行できます。



解釈:


Inhibitor pattern(上向きに凸となる混合曲線)
患者血漿に正常血漿を加えても、凝固時間の延長は是正されません(上図の1)。また、正常血漿に患者血漿を加えますと、凝固時間が延長します(上図の2)。
代表的疾患は、第VIII因子インヒビターループスアンチコアグラントなどです。
VIII因子インヒビター以外には、第XII因子、XI因子、IX因子に対するインヒビターでもこのパターンになります。

Deficiency pattern(下向きに凸となる混合曲線)
患者血漿に正常血漿を加えますと、凝固時間の延長が是正されます(上図の3)。また、正常血漿に患者血漿を加えても、凝固時間は延長しません(上図の4)。
代表的疾患は、肝不全(凝固因子産生の低下)、血友病A&Bです。
ビタミンK欠乏症、先天性第XII、XI因子欠損症でもこのパターンになります。

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:24| 凝固検査 | コメント(1)

◆この記事へのコメント:

この記事に対して、50歳代の小児科の先生からご質問をいただきました。本名が書かれていましたので、公開手続きをとらずに、ご質問の紹介の上、コメントさせていただきます。


(以下がご質問の内容です)
------------------------
患者さんのことを調べていて『血液・呼吸器内果のお役立ち情報』を拝見させていただきました.分り易くきちんとした文章で、ご相談に乗っていただければとメールさせていただいた次第です.
 患者さんは3歳女児で鼠径ヘルニアの術前検査でAPTTが60秒と延長していたため、小児科にコンサルトがありました.既往症/現病歴としては蕁麻疹を繰り返しています.出血傾向はなく、出血時間は3分30秒と問題なかったので手術はOKとし、トラブルなく終了しています.採血手技の問題を考えて私自身が採血して再検ましたが、APTTは59.3秒、PT-INRは1.07でした.SRLで測定した凝固因子は///因子【管理人註:///は文字化けで判読できませんでした】は夫々134/135/132/108で低下なく、vWFも104でした.ご両親が精査を希望されているのでプレカリクレイン、高分子キニノーゲン、ループスアンチコアグラントを考えていますが、このクロスミキシング試験は加える必要があるのでしょうか?ループスアンチコアグラントを検査する前にクロスミキシング試験をする方がよいのでしょうか?小さい子なのでなるべく少ない検査で済ませたいのですが、他に検査項目はありますでしょうか?
------------------------
(以上がご質問の内容です)

小児科医先生、この度は、ご訪問ありがとうございます。
文字化けのため推測ですが、134/135/132/108のデータは、XII、XI、IX、VIII因子活性であっていますでしょうか。

XII、XI、IX、VIII活性がまったく正常で、vWFも全く正常だとしますと、次に行うべき検査は、ご指摘の通り、プレカリクレイン、高分子キニノーゲン、ループスアンチコアグラントです。


ループスアンチコアグラント検査には注意が必要です。
http://www.3nai.jp/weblog/entry/29077.html

ループスアンチコアグラントの診断のためには、クロスミキシング試験が不可欠です。ただし、検査委託会社では「ループスアンチコアグラント」のオーダーでは、クロスミキシング試験をしていないところが多いのではないかと思います。

最近、「クロスミキシング試験」の名前で保険点数がつきましたので、「ループスアンチコアグラント」「クロスミキシング試験」の両者のオーダーをされるのが良いと思います。

APTTの延長が明らかですので(XII、XI、IX、VIII活性がまったく正常としますと)、プレカリクレイン、高分子キニノーゲン、ループスアンチコアグラントのいずれかでひっかかるように思います。

以上、分かる範囲内で書かせていただきましたが、回答になっていますでしょうか。

投稿者:血液内科・呼吸器内科: at 2009/10/13 14:10

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