金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年12月02日

金沢大学血液内科系統講義試験(輸血学)

本日の、血液内科試験に関しまして、輸血領域の問題&正答と、簡単な解説をアップします。


28.ABO型異型(不適合)赤血球輸血について誤っているものはどれか.一つ選べ.

a) 死亡率は約20%である.
b) 原因として最も多いのは輸血バッグの取り違えである.
c) ショックやDIC,腎不全に備える.
d) バイタルサインを測定したのち輸血を中止する.
e) 原則ICU管理とする.

(正答)d
(解説)ABO不適合輸血が判明した場合、まずは輸血を中止する。


29.輸血療法に関して正しいものはどれか.一つ選べ.
a) 体重40 kgの患者に赤血球製剤を2単位輸血すれば,Hbは約2 g/dL上昇する.
b) 輸血した血小板の約50%は脾臓に捕捉される.
c) 血清アルブミン値1.5 g/dLは,アルブミン投与の絶対適応である.
d) 新鮮凍結血漿は,融解後6時間以内に輸注する.
e) アルブミン投与後の血管回収率は通常100%である.

(正答)a
(解説)
a)赤血球製剤を1単位輸血するとHbは(40/患者体重)分増加する。患者体重40 kgの場合40/40=1 g/dL増加することになる。2単位の場合これを2倍すればよい。

b)輸血した血小板の約1/3はただちに脾臓に補足され破壊される。したがって、輸血した血小板のうち、血小板数増加に寄与するのは全体の約2/3である。

c)アルブミン投与の適応は「低アルブミン血症に伴う血漿膠質浸透圧低下・循環血漿量低下の改善」である。難治性腹水を伴う肝硬変や重症熱傷などがこれに相当する。低アルブミン血症だけではアルブミン投与の適応と言えない。

d)新鮮凍結血漿は、解凍後の失活を避けるため、原則として解凍後3時間以内に輸注する。

e)投与したアルブミンのうち血中にとどまるアルブミンの割合は血管回収率と呼ばれ、通常40%程度である。病態により変動するが、100%になることはない。残りは血管外へ漏出する。「血漿膠質浸透圧低下・循環血漿量低下の改善」に有益なのは、通常血中アルブミンに限られる。


30.下記の中で,手術前に赤血球輸血準備を考慮すべきものはどれか.一つ選べ.

a) 患者がRhD陽性
b) 患者がAB型
c) 不規則抗体陰性
d) 輸血の可能性が20%
e) 予想出血量400 mL

(正答)e
(解説)
以下のいずれかの場合、手術前に赤血球輸血準備を考慮する。
・輸血の可能性が30%以上
・予想出血量が400 mL以上
・RhD陰性
・不規則抗体陽性
したがって、答えはeとなる。


31.輸血前に調べなくてもよい感染症検査はどれか.一つ選べ.
a) HBs抗原
b) HBs抗体
c) HBc抗体
d) HCV抗体
e) HTLV-I抗体

(正答)e
(解説)
輸血前患者は下記検査を受けることが推奨されている。
・HBs抗原
・HBs抗体
・HBc抗体
・HCV抗体
・HCVコア蛋白
・HIV検査(同意が必要)


32.不規則抗体に関し正しいものはどれか.一つ選べ.
a) 不規則抗体は,Landsteinerの法則に従う血液型関連抗体である.
b) 不規則抗体は経産婦より未産婦の方が検出されやすい.
c) 不規則抗体は,抗A・抗B抗体を含む血液型関連抗体である.
d) 血液センターから供給される赤血球製剤は副試験不要である.
e) 不規則抗体は溶血の原因にならない.

(正答)d
(解説)
a)不規則抗体は、Landsteinerの法則に従わない血液型関連抗体である。
b)不規則抗体は、妊娠・出産・輸血などを契機に産生される。
c)抗A・抗B抗体はLandsteinerの法則に従う規則抗体である。
d)血液センターから供給される血液は、不規則抗体陰性が確認されているため、通常は副試験不要である。
e)不規則抗体は溶血性副作用を起こすことがある。


33.輸血後GVHDについて誤っているものはどれか.一つ選べ.
a) 血液製剤に含まれるリンパ球が患者を攻撃して起こる.
b) 致死率はほぼ100%である.
c) 年々増加している.
d) 近親者からの輸血を避けることは,予防策となる.
e) 新鮮血を避けることは,予防策となる.

(正答)c
(解説)
血液製剤への照射が行われるようになってから、輸血後GVHDは少なくなった。

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 20:40| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)

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