2008年12月02日
金沢大学血液内科系統講義試験(平成20年12月2日)
本日の、金沢大学血液内科進級試験(系統講義試験)のうち、血栓止血領域の7題について、回答と簡単な解説をアップします。
なお、試験会場で見て回ったところでは、7〜8割くらいの人は、以下の7問に関しては満点だったと思います。
詳細な回答は、以前の過去問解説(右サイド医師国家試験・専門医試験対策のカテゴリー)も参照してもらえればと思います。
21.下記の疾患または病態のうち,検査所見の記載が正しいのはどれか.一つ選べ.
出血時間 | PT | APTT | Fbg | HPT | |
a) 血友病 A | 延長 | 正常 | 延長 | 正常 | 正常 |
b) von Willebrand病 | 延長 | 正常 | 正常 | 正常 | 正常 |
c) 先天性第VII因子欠損症 | 正常 | 延長 | 正常 | 正常 | 正常 |
d) アスピリン内服 | 延長 | 正常 | 正常 | 正常 | 正常 |
e) Bernard-Soulier症候群 | 延長 | 正常 | 延長 | 正常 | 正常 |
PT:プロトロンビン時間
APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間
Fbg:フィブリノゲン
HPT:ヘパプラスチンテスト
(正答)d
(解説)ごく若干名の方が、cを選択していましたが、HPTはVII、X、II因子を反映するため、先天性第VII因子欠損症では、HPTが低下します。
22.下記の疾患のうち出血,血栓の両者がみられる疾患・病態はどれか.一つ選べ.
a. 高Lp(a)血症
b. 高ホモシステイン血症
c. 異常フィブリノゲン血症
d. 先天性α2プラスミンインヒビター(α2PI)欠損症
e. 高プラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)血症
(正答)c
(解説)異常フィブリノゲン血症では、出血、血栓の両者をおこしやすいです。ごく若干名の方が、 高ホモシステイン血症を選択していましたが、この疾患は血栓性病態です。
23.抗リン脂質抗体症候群(APS)に関する記載内容として正しいものはどれか.一つ選べ.
a. 血小板数,APTT,PTが正常で,抗カルジオリピン抗体が陰性であれば,APSを否定できる.
b. 40歳未満のAPS症例は例外的である.
c. 動脈血栓症では脳梗塞が最も多い.
d. 習慣性流産の若年女性に対しては,妊娠判明後ワルファリンによる抗凝固療法を行う.
e. ループスアンチコアグラント陽性例では,フィブリノゲンが上昇する.
(正答)c
(解説)動脈血栓症では脳梗塞が最も多いです。ほぼ全員が正答だったと思います。
24.播種性血管内凝固症候群(DIC)の記載として正しいものはどれか.一つ選べ.
a. 血小板数,フィブリノゲンともに正常であれば,DICを否定できる.
b. 急性前骨髄球性白血病に合併したDICでは,血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が著増する.
c. 線溶抑制型DICでは,血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が正常である.
d. 敗血症に合併したDICでは,血中プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)が著増する.
e. 敗血症に合併したDICでは,フィブリノゲンが低下しやすい.
(正答)b
(解説)ごく若干名の方が、eを選択していましたが、敗血症では強い炎症反応のためフィブリノゲンは上昇し、DICを合併しても、フィブリノゲンは低下しにくいです。
25.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)の両者に共通した所見の記載として正しいはどれか.一つ選べ.
a. 直接ビリルビンの上昇
b. ク−ムス試験陽性
c. 血清ハプトグロビンの上昇
d. 血清LDHの上昇
e. ADAMTS 13に対する自己抗体の出現
(正答)d
(解説)ごく若干名の方が、aを選択していましたが、直接ビリルビンではなく間接ビリルビンと見間違えてしまったのかも知れません。
26.血栓止血関連疾患の治療に関する記載として正しいのはどれか.一つ選べ.
a. 深部静脈血栓症の再発予防としては,アスピリンによる抗血小板療法が有効である.
b. 単純性紫斑病に対しては,ビタミンCの投与が半数例で有効である.
c. アレルギー性紫斑病に対しては,ビタミンKの投与が半数例で有効である.
d. 閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対しては,ビタミンKの内服が有効である.
e. インヒビターを有する血友病B症例の出血に対しては,遺伝子組換え活性型第VII因子製剤を投与する.
(正答)e
(解説)ごく若干名の方がaを選択していましたが、深部静脈血栓症の再発予防としては,ワルファリンによる抗凝固療法が有効です。
27.患者:22歳女性.抜歯後の止血困難の精査目的に来院した.血液検査は下記の通りであった.Hb 9.2 g/dL,血小板数 32.7万/μL,出血時間17分,PT 11.0秒,APTT 74.3秒,フィブリノゲン 322 mg/dL,FDP 1.9 μg/mL.妹には幼少時から頻回に鼻出血がみられる.「この22歳女性の疾患」と「血友病A」に共通しているのはどれか.一つ選べ.
a. 遺伝形式
b. 主な出血部位
c. 巨大血小板の出現
d. 血小板粘着能の低下
e. 血漿由来第VIII因子製剤(コンファクトF)が有効
(正答)e
(解説)この問題が一番難しいのではないかと思いましたが、ほとんどの人が正答でした。von Willebrand病と、血友病Aに共通しているのはどれかという問題です。血漿由来第VIII因子製剤(コンファクトF)は、von Willebrand因子も含有した第VIII因子濃縮製剤です。
血栓止血領域の7問は以上です。
全員が合格になっていることを祈っています。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 16:52| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)