播種性血管内凝固症候群(DIC):腎糸球体フィブリン沈着(図解21)
DICモデル比較の続きです。
前回の記事では、LPS誘発DICモデルでは肝腎障害は高度であるけれども、組織因子(TF)誘発DICモデルでは肝腎障害はほとんどないことを紹介させていただきました。両モデルは、同程度の凝固活性化がみられたにもかかわらず、臓器障害の出現の仕方がまるで異なるのです。
今回は、腎糸球体フィブリン沈着の程度をPTAH染色で評価した結果を紹介させていただきます。昔の教科書には、DICの特徴的な病理像として微小血栓の沈着が記載されています。
上図の通り、LPS誘発DICモデルでは確かに腎糸球体フィブリン沈着は高度であり、しかもフィブリン沈着が遷延しています。ところが、TF誘発DICモデルにおいては腎糸球体フィブリン沈着は軽度でありしかも速やかに消退しています。
TATで評価される凝固活性化が同程度であり、血小板数やフィブリノゲンの低下で評価される消費性凝固障害が同程度であったとしても、腎糸球体フィブリン沈着の程度はまるで異なります。
つまり、昔の教科書に書かれていたDICの病理所見「微小血栓の沈着」は、決してDICにおいて普遍的に言える訳ではないことになります。
DICの2大症状は、臓器障害(微小血栓の多発による微小循環障害)と、出血症状です。さて、出血症状に関しては両モデル間で差違はあるのでしょうか?
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:09| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0) | トラックバック(0)