播種性血管内凝固症候群(DIC):基礎疾患とFDP(図解28)
DIC診断の上で、最も重要なマーカーの一つと信じられているのがFDPです。上図は、DICの代表的基礎疾患ごとに、FDPの変動をみたものです。図の右側に書かれている、1、2、3点というのは、厚生労働省(旧厚生省)DIC診断基準でのスコアリングです。
急性前骨髄球性白血病(APL:M3)では、高度のFDP上昇が見られています。
一方で、敗血症(sepsis)に合併したDICにおきましてもFDPの上昇は見られていますが、その上昇の程度はAPLと比較しますとごく軽度です。確かにFDPは上昇するものの、健常人と比較しましても軽度上昇に留まっています。以前の記事で書かせていただいたように、敗血症におきましては、線溶阻止因子PAI(プラスミノゲンアクチベータインヒビター)が著増するために、線溶に強いブレーキがかかり血栓が溶解しにくいために、FDPはあまり上昇しないものと考えられます。
APL以外の急性白血病(acute leukemia:AL)、固形癌(solid cancer)に合併したDICにおきましては、APLと敗血症の中間的なFDPの上昇です。
FDPはDIC診断に不可欠と考えられているマーカーではありますが、その上昇の程度は基礎疾患によって相当に異なる点には注意が必要です。
特に、敗血症に合併したDICにおきましては、典型的なDICでもFDPの上昇は軽度にとどまります。敗血症症例では過度にFDPを重要視しますとDICの診断が遅れる懸念があるのです。
(補足)
上図での症例は、厚生労働省(旧厚生省)DIC診断基準でDICと診断された症例について検討したものです。
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:56| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0) | トラックバック(0)