播種性血管内凝固症候群(DIC):FDPとDダイマーの違い(図解27)
研修医の先生や、医学部学生さんから、FDPとDダイマーはどう違うのかという御質問をよくいただきます。図を使用して解説を試みたいと思います。
以前の記事でも書かせていただいたように、FDPというのは、fibrin/fibrinogen degradation products(フィブリン/フィブリノゲン分解産物)の頭文字をとっています。ですから、フィブリンが分解してもFDPですし、フィブリノゲンが分解してもFDPです。
フィブリンやフィブリノゲンを分解する現象のことを線溶と言いますが、この役割を演じている酵素はプラスミンです(参考記事)。
さて、Dダイマー(D-dimer:DD)とは何でしょう? 上図右側のフィブリン分解産物の細小単位です。FDPの一部であるフィブリン分解産物(上図の円の右半分)の、さらに細小単位がDダイマーです。ですから、FDPの一部の、さらに一部がDダイマーです。
通常、フィブリノゲンよりもフィブリンの方が遥かにプラスミンの作用を受けやすいために、FDPの大部分はフィブリン分解産物です。そのため、FDPとDダイマーは絡み合うように上昇することが多いです。たとえば、FDP20μg/mLならばDダイマー15μg/mL、FDP50μg/mLならばDダイマー40μg/mLと言った感じです。
ただし、絡み合わないことがあります。たとえば、FDP100μg/mLでDダイマー20μg/mLと言ったデータです。このような成績をみた時に、FDPとDダイマーの間に解離現象があると評価します。
どういう時に、FDPとDダイマーの間に解離現象がみられるのでしょうか?上図をじっくり見ますと分かるのではないかと思います。円の左側、すなわちフィブリノゲン分解産物が増加した場合です。この場合は、フィブリン分解産物の取り分が少なくなってしまいますので、必然的にDダイマーの取り分が少なくなります。
フィブリノゲンは、本来は止血に必要な蛋白ですから分解されて良い訳がありません。
どういう場合にこのような不都合なことがおこるかと言いますと、極めて高度な線溶活性化を生じている場合です。
極めて高度な線溶活性化が生じている場合(線溶亢進型DICなど)には、フィブリノゲンの分解が進行するために、FDPとDダイマーの間に解離現象を生じます(FDP/Dダイマー比が上昇します)。
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:30| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0) | トラックバック(0)