晩期効果:造血幹細胞移植前処置としてのATG(4)
【晩期効果を有するATG】
ATGの血中半減期は2週間程度です。
しかし、T細胞抑制効果は数年以上持続する可能性が示唆されています。
これは、何らかの機序でATGが胸腺機能に影響して起こるものと考えられています。
Bacigalupoらは、非血縁者間骨髄移植患者109例を対象に、移植前処置にATGを用いるか用いないかでランダム化試験を実施して、移植後3年の時点で生存率に差がみられなかったと報告しています。
しかし、その後さらに3年間観察を続けたところ、前処置にATGを用いた群と用いない群では、広汎性慢性GVHDの発症率が15% vs. 41% (P=0.01)、Karnofsky score 90%以上の患者割合が89% vs. 57% (P=0.03)と差が認められました。
特に、慢性肺機能障害の割合が19% vs. 51%(P=0.005)と、大きな差が認められたのは印象的です。
6年生存率は44% vs. 31%(P=0.8)と有意差はありませんでしたが、1年以上生存した患者に限ると85% vs. 58%(P=0.09)とATG群に良好な傾向がみられました。
したがって、非血液腫瘍例や、移植後早期再発の可能性が低く移植関連死亡が懸念される症例は、ATGのよい適応と思われます。
(続く)
【シリーズ】造血幹細胞移植前処置としてのATG
1)背景
2)作用機序
3)GVHD予防
4)晩期効果
5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法
6)臍帯血移植&GVHD
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:05| 血液疾患(汎血球減少、移植他) | コメント(0) | トラックバック(0)