臍帯血移植&GVHD:造血幹細胞移植前処置としてのATG(6)
【臍帯血移植前処置のATG】
臍帯血移植では、急性GVHD予防に加え、ホスト免疫を抑制し生着不全を防ぐ目的で、ATGが使用されます。
欧州血液骨髄移植グループの報告では、臍帯血移植患者の77%がATGを含む移植前処置を受けていました。臍帯血移植においても、ATGが急性GVHD予防効果を有することが報告されています。
臍帯血移植はGVHDの発症頻度が低いと考えられてはいますが、感染症とともに重症GVHDの発症も、臍帯血移植の成否を大きく左右しているのです。
ATGを含まない前処置を受けることの他には、複数臍帯血移植・緩和的前処置は急性GVHDの発症をうながす危険因子であったという報告があります。今後臍帯血移植における急性GVHD予防対策はますます重要になると考えられます。
臍帯血移植62例の前処置に抗胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(商品名:サイモグロブリンTG) 6-7.5 mg/kgを用いたイタリアからの報告によりますと、2-4度急性GVHDの頻度は15%、3-4急性GVHDはわずか2%でした。
特に、緩和的前処置後に複数臍帯血移植を実施する場合、治療関連死亡を防ぐため、ATGによるin vivo purgingが有用かもしれません。
日本ではATGが移植に適応を有していなかったこともあり、移植前処置にATGが用いられることは少なかったですが、今後実施が予定されている臨床研究の結果が待たれるところです。
【重要性の増すGVHD対策とATG】
日本では、graft-versus-malignancy効果の増強を主眼とする研究が盛んですが、実はGVHDなど移植関連合併症死亡(約40%)のほうが原病死亡(約15%)よりも多いのです。
GVHD後遺症や進行性の臓器障害など、晩期障害による死亡やQOL低下の問題も最近特にクローズアップされてきています。GVHDは、予防・診断・治療法も含めて未解明の部分も多いのですが、ATGを適切に使用することにより、移植成績が改善する可能性は十分あると考えられます。
【シリーズ】造血幹細胞移植前処置としてのATG
1)背景
2)作用機序
3)GVHD予防
4)晩期効果
5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法
6)臍帯血移植&GVHD
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:31| 血液疾患(汎血球減少、移植他) | コメント(0) | トラックバック(0)