金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年02月05日

先天性血栓性素因と症状:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(3)

アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(2)からの続きです。



【臨床症状】


先天性血栓性素因のヘテロ接合体患者は、通常は幼少時にはあまり血栓症はみられません。ただし、血栓症の70〜80%が40歳以前に発症します。

先天性血栓性素因の多くは、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)で、下肢の深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞栓(pulmonary embolism:PE)などを発症しますが、まれな場所(脳静脈洞血栓症、門脈血栓症、腸間膜静脈血栓症など)に発症する場合もあります。



特に以下の血栓症の場合には、先天性血栓性素因(先天性アンチトロンビン欠損症、先天性プロテインC欠損症、先天性プロテインS欠損症など)があることを予測して検査する必要があります。

1)若年性発症
2)まれな場所に発症
3)再発性
4)家族性
5)抗凝固療法中にもかかわらず血栓症を反復
6)習慣性流産を含む不育症




ただし、血栓症の発症には、以下のような引き金となる他の危険因子の存在も重要ですので、問診の際に十分把握する必要があります。

1)外傷
2)手術
3)感染
4)妊娠
5)ホルモン補充療法
6)経口避妊薬の内服
7)長期臥床
8)ロングフライト(旅行者血栓症)



なお、プロテインC(PC)欠損症とプロテインC(PS)欠損症は、55歳以前の動脈血栓発症のリスクを増加させ、静脈血栓症ばかりでなく動脈血栓症も発症しやすいことが最近明らかとなっています。


また、PC欠損症のホモ接合体および複合へテロ接合体は極めてまれですが、新生児期より皮膚の壊死を伴う電撃性紫斑病(purpura fulminans)や、重篤な静脈血栓症を呈することがあります。


 (続く)

 

【シリーズ】先天性血栓性素因アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症

1)病態 
2)疫学 
3)症状 
4)血液・遺伝子検査  ←遺伝子検査のご依頼はこちらからどうぞ。
5)診断 
6)治療

 

 

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先天性アンチトロンビン欠損症の治療

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:03| 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)

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