副鼻腔気管支症候群(SBS):咳嗽の診断と治療(9)
アトピー咳嗽 vs. 咳喘息:咳嗽の診断と治療(8)からの続編です(咳嗽ガイドライン関連記事)。
【副鼻腔気管支症候群】Sinobronchial Syndrome(SBS)
概念
慢性・反復性の好中球性の気道炎症を上気道と下気道に合併した病態です。
上気道の病変は慢性副鼻腔炎(とくに上顎洞炎)です。下気道の病変は慢性気管支炎、びまん性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎の三つに分類されます。
本疾患は慢性湿性咳嗽を呈する代表的疾患です。14、15員環マクロライドが奏効する点で本疾患の認識は極めて重要と言えます。
病態
何らかの気道防御機構の障害に関連して発症すると推測されていますが、詳細は不明です。
診断
簡易診断基準を以下に示します。
副鼻腔気管支症候群(Sinobronchial Syndrome:SBS)の簡易基準診断
(下記の1〜3の全てを満たす)
1.呼吸困難発作を伴わない咳嗽(しばしば湿性)が8週間以上継続
2.以下の3つの所見のうち,1つ以上を認める
(1)後鼻漏,鼻汁および咳払いといった副鼻腔炎に伴う自覚症状
(2)上咽頭や中咽頭における粘液性ないし粘液膿性の分泌物(後鼻漏)の存在ないしcobblestone appearanceといった副鼻腔炎に伴う他覚所見,
(3)副鼻腔炎を示唆する画像所見
3.14ないし15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬が有効
副鼻腔炎の検出には、副鼻腔の画像所見(液体貯留像や粘膜肥厚像)が有用ですし、鼻汁スメアに好中球を認めることは重要な所見となります。
後鼻漏や咳払い(throat clearing)は副鼻腔炎の存在を強く示唆することになります。
喀痰中に肺胞マクロファージに加えて多数の好中球を認めることは、下気道における好中球性気道炎症の存在を示す重要な所見です。
治療
軽症:
気道粘液修復薬(L-カルボシステイン)が有効です。びまん性汎細気管支炎のように末梢気道の去痰が必要な場合には気道粘膜潤滑薬(塩酸アンブロキソール)を併用します。
中等症:
常用量の1/4〜1/2量の14,15員環マクロライド薬を併用します。
重症&増悪時:
喀痰培養で検出された病原菌に感受性のある抗菌薬の常用量を1〜3週間上乗せします。症状が軽快すれば薬剤を減量・中止します。再燃時には同様な治療を繰り返します。
(続く)
【シリーズ】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
3)急性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
7)咳喘息
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
【関連記事】 好酸球性下気道疾患
2)咳喘息
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:10| 咳嗽ガイドライン | コメント(0) | トラックバック(0)