金沢大学医学部:冬学期呼吸器内科試験(第三回)
先日の冬学期呼吸器内科試験の試験問題と解答をブログ記事としてアップいたします。
1.特発性間質性肺炎で認められる特徴的な所見を三つ選択せよ
1)呼気終末のfine cracklesが特徴である
2)残気率が上昇する
3)バチ状指がみられる
4)動脈血ガス分析上、次第にA-aDO2が大きくなる
5)器質化肺炎(OP)はステロイド反応が良好である
答え 3,4,5
2.特発性間質性肺炎の診断・モニタリングにおける血液学的指標を三つ選択せよ
1)KL-6
2)LDH
3)CRP
4)SP-C
5)SP-D
答え 1,2,5
3.気管支肺胞洗浄(BAL)について正しいものを三つ選択せよ
1)BALは滅菌蒸留水で行う
2)BAL液中リンパ球は,ほとんどがT細胞である
3)健常者のBAL液中では,マクロファージが最も多い
4)BALは治療にも用いられる
5)BAL液所見は,喫煙により影響されない
答え 2,3,4
4.間質性肺炎の診断において,重要な問診項目を三つ選択せよ
1)喫煙
2)飲酒
3)毛布
4)ペット
5)住宅
答え 1,4,5
5.自己免疫疾患関連間質性肺炎のスクリ−ニング検査として重要なものを三つ選択せよ
1)抗核抗体
2)リウマチ因子
3)抗Jo-1抗体
4)PR3-ANCA
5)抗Scl-70抗体
答え 1,2,3
6. 咳嗽に関して正しいものを三つ選びなさい。
(1) 発症後3週間以内の咳を急性咳嗽と定義する。
(2) 発症後3週間以上持続する咳を慢性咳嗽と定義する。
(3) 慢性咳嗽の原因は、非感染性疾患より感染性疾患によるものが多い。
(4) 湿性咳嗽の診断と治療の標的は気道の過分泌である。
(5) 乾性咳嗽の発症機序には、気道の咳感受性亢進によって咳嗽が発症する機序と、気管支平滑筋の収縮がトリガーとなって咳嗽が発症する機序がある。
解答:1,4,5
7.咳嗽の診断における検査方法で正しいものを三つ選びなさい。
(1) 感染性疾患では、喀痰グラム染色や抗原検査が病原菌を同定するための迅速法として有用である。
(2) 気道可逆性試験では、ヒスタミン吸入前と吸入15〜30分後にFEV1を測定する。
(3) 好酸球性気道炎症の証明には、気管支鏡を用いた気管支粘膜生検やBAL(気管支肺胞洗浄)が第一選択の検査として行われる。
(4) 誘発喀痰検査では、高張食塩水を吸入する。
(5) カプサイシン咳感受性には性差があり、女性の方が男性よりも亢進している。
解答:1,4,5
8.咳喘息に関して正しいものを二つ選びなさい。
(1) 気管支拡張薬が有効である。
(2) 気道過敏性は亢進していることが多い。
(3) 吸入ステロイドを使用しない場合、成人例の90%が喘息に移行する。
(4) 誘発喀痰検査を行うと、好中球の増加が特徴的である。
(5) 吸入ステロイド薬の早期導入により、典型的喘息への移行を防止できる可能性がある。
解答:1,5
9. アトピー咳嗽に関して正しいものを三つ選びなさい。
(1) 喉頭や気管の掻痒感(イガイガ感)を伴う乾性咳嗽を唯一の症状とする。
(2) 女性、特に中年女性の多い。
(3) 好酸球性気道炎症部位は、主に中枢気道が主体である。
(4) カプサイシン咳感受性試験は正常である。
(5) ヒスタミンH2受容体拮抗薬が有効である。
解答:1,2,3
10. 副鼻腔気管支症候群(SBS)に関して正しいものを三つ選びなさい。
(1) 気道可逆性は陽性である。
(2) 慢性・反復性の好中球性の気道炎症を上気道と下気道に合併した病態である。
(3) 去痰薬や14、15員環マクロライド系抗菌薬が有効である。
(4) 血清IgA高値、寒冷凝集素価上昇を認めることが多い。
(5) 重症例には吸入ステロイド薬が有効である。
解答:2,3,4
11.閉塞型睡眠時無呼吸症候群について間違っているものを2つ選べ
1:中年以降の男性に多い疾患である
2:無呼吸とは10秒以上の気流の停止をいう
3:睡眠中に1時間あたり10回以上の無呼吸が認められるものをいう
4:以前には認められなかった現代病のひとつである
5:通常激しいいびきを認める
解答: 3、4
12.閉塞型睡眠時無呼吸症候群について正しいものを2つ(三つの誤り)選べ
1:日本人ではほとんどがBMI 30以上である
2:メタボリックシンドロームを合併することが多い
3:自分のいびきのために夜間の不眠を訴える患者が多い
4:うつ病と誤診されることもある
5:夜間頻尿、早朝の頭痛、日中の倦怠感、集中力の欠如などの症状がある
正解 2、4、5(設問の誤りのため、左記のうちの二つで正解とする。)
13.閉塞型睡眠時無呼吸症候群について間違っているものを2つ選べ
1:睡眠時無呼吸はNREM睡眠に出やすい
2:確定診断は終夜睡眠ポリグラフ検査である
3:末端肥大症が原因になることがある
4:扁桃肥大が原因になることがある
5:甲状腺機能亢進症が原因になることがある
正解 1、5
14.閉塞型睡眠時無呼吸症候群について正しいものを3つ選べ
1:治療抵抗性高血圧の原因疾患のことが多い
2:交通事故との関連は少ない
3:死亡することは少ない
4:交感神経活動は密接な関連が認められている
5:子供にもある
正解 1、4、5
15.過換気症候群について正しいものを2つ選べ
1:酸素吸入は禁忌である
2:テタニー様硬直性痙攣が特異的である
3:30歳以上の女性に多い
4:器質的疾患を除外することが重要である
5:紙袋再呼吸法が有効である
正解 4、5
16.タバコについて正しいものを3つ選べ
1.タバコの煙は蒸気相と粒子相からなる。
2.タバコの煙には4,000種類以上の化学物質が含まれる。
3.タバコの煙には60種類以上の発癌物質が含まれる。
4.主流煙(喫煙者が吸い込む煙)と副流煙(タバコの点火部分から立ち上がる煙)を比べると、人体に対する有害物質は、一般に前者に多く含まれる。
5.タバコは基本的に嗜好品であり、喫煙は古来の伝統文化であるため、常習喫煙者をニコチン依存症とみなすのは医学的に適切ではない。
解答:1,2,3
17.喫煙率について正しいものを一つ選べ
1.2005年の統計では、日本の喫煙率は、男女ともに若い世代(20歳代〜40歳代)の方が、高齢者(60歳代以上)より高い。
2.2005年の統計では、男女とも喫煙率は、10年前に比べると、すべての年代で減少傾向にある。
3.2005年の統計では、男性の喫煙率は、年齢別では20歳代で最も高く、60%を越えている。
4.2005年の統計では、女性の喫煙率は、年齢別では20歳代で最も高く、30%を越えている。
5.欧米の先進国に比べ、日本では女性の喫煙率が高いことが特徴的である。
解答:1
18.タバコによる健康被害について誤っているものを3つ選べ
1.1日の喫煙本数×喫煙年数が200未満(喫煙指数200未満)であれば、健康被害のリスクは低く、許容範囲内の喫煙量である。
2.低タールのタバコは、高タールのタバコより安全性が高いので、タバコ関連疾患の家族歴のある喫煙者に勧められる。
3.喫煙により急性リンパ性白血病の発症リスクが高まる。
4.喫煙者は非喫煙者に比べ周術期に合併症を併発するリスクが高く、手術1か月以上前からの禁煙が勧められる。
5.受動喫煙により、小児喘息の発症リスクが高まる。
解答:1,2,3
19.禁煙が治療法の一つとなる呼吸器疾患を一つ選べ。
1.肺結核
2.自然気胸
3.気管支喘息
4.肺好酸球性肉芽腫症(肺ランゲルハンス組織球症)
5.過敏性肺臓炎
解答:4
20:禁煙について誤っているものを一つ選べ。
1. 医療従事者は、医療機関を受診するあらゆる常習喫煙者に対して、タバコによる健康被害の合併の有無に関わらず、禁煙を勧めるべきである。
2. 禁煙の治療は、主に行動療法と薬物療法からなる。
3. 禁煙の治療に用いる薬物療法は、ニコチン製剤と非ニコチン製剤の2種類に大別される。
4. 禁煙の治療に用いる薬物療法は、喫煙習慣に伴う生活習慣病に対する治療薬といえるので、原則的に長期間(通常6ヶ月以上)継続する。
5. 禁煙の治療は保険診療で行うことができる。
解答:4
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:18| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)