金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年04月10日

INRとF1+2の相関:血液凝固検査入門(35)

心房細動とF1+2(アスピリン vs. ワーファリン):血液凝固検査入門(34)から続く。

血液凝固検査35

 


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心房細動症例に対して抗凝固療法治療薬であるワルファリン(商品名:ワーファリン)を投与した場合の、PT-INRと凝固活性化マーカーであるプロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)との相関関係を見たのが上図です。

両者の間には負の相関関係があります。
つまり、ワーファリンコントロールを強くしますと(PT-INRを高値でコントロールしますと)、F1+2は低下していますので凝固活性化が是正されていることになります。
逆に、ワーファリンコントロールが弱くなりますと(PT-INRが低値になりますと)、F1+2は上昇してしまいますので凝固活性化は是正されていないということになります。

この相関関係は理にかなっていると言えます。確かに、多くの症例で全体的に検討しますと上記の通りなのでしょう。

しかし、じっくりこの図を見ていますと違ったことも見えてきます。つまり、INR 6.7くらいで大出血の副作用をおこしうるようなワーファリンコントロール中であっても、F1+2が異常高値になっている症例も存在します。

逆に、INR 1.0とワーファリンを内服していないに等しい状態であってもF1+2が正常であることも少なくありません。

全体的にみれば、確かにINRで評価したワーファリンコントロールの強度と、F1+2で評価される凝固活性化状態は関連がありますが、個々の患者さんでは必ずしもこの相関が当てはまらないことが少なくありません。

個々の患者さんにおける適切なワーファリンコントロールのためには、PT-INRのみでなくF1+2も同時にチェックして、より良いコントロールを行うべきではないかと考えられます。

PT-INRは、以下の記事を御参照いただければと思います。

 
関連記事(リンクしています)
TAT
PIC
アンチトロンビン
PT(PT-INR)とは?
PT(ワーファリン)&トロンボテスト
APTT
クロスミキシング試験
Dダイマー
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・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:05| 凝固検査 | コメント(5) | トラックバック(0)

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http://control.bgstation.jp/util/tb.php?us_no=426&bl_id=391&et_id=29444

◆この記事へのコメント:

このような場をお借りして質問させていただいてもよろしいでしょうか?

ワーファリン投与にて、既存の血栓(静脈系)が溶解してしまう機序をご教授いただけないでしょうか?

お忙しいなかとても恐縮ですが、なにとぞよろしくお願いいたします。

投稿者:カズ: at 2009/04/10 20:35

カズさん、この度はご訪問ありがとうございます。

ワルファリン(商品名:ワーファリン)は、経口抗凝固療法治療薬です。
ウロキナーゼやt-PAなどの線溶療法治療薬とは異なり、血栓を直接溶解する作用はありません。

しかし、ワーファリンの内服によって、血栓の進展を阻止することが可能です。生体には、内因性の線溶作用がありますので、ワーファリンによって凝固を阻止している間に、内因性の線溶作用によって血栓が溶解していくと言った考え方です。血栓形成と血栓溶解のバランスをワーファリンによって操作して、血栓溶解へ傾けます。

線溶療法とは異なり、血栓溶解のスピードは遅いですが、深部静脈血栓症ではこの方が良いと考えられています。

深部静脈血栓症に対する線溶療法に対して警鐘を鳴らすような報告もあります(出血の副作用の問題、肺塞栓を誘発する可能性)。

以上、お答えになっていますでしょうか。

投稿者:血液内科・呼吸器内科: at 2009/04/13 10:12

お忙しい中、早速の回答ありがとうございます。とても参考になりました。
いろいろ調べ、ワーファリンは直接血栓溶解作用を持たないことまでは分かったのですが、ではどのようにして血栓が溶解されるのか?が分からなかったもので。。

無知でとてもお恥ずかしい質問をしてしまいましたが、親切にお答えいただきありがとうございました。

投稿者:カズ: at 2009/04/15 00:25

 
 大変 参考になりました。
 お忙しところ本当にありがとうございました。

投稿者:T.T: at 2009/05/15 20:41

実名が書かれていましたので、公開手続きをとらずに、コメント紹介のかたちにしたいと思います。

(以下がご質問内容です)
最近、経口抗トロンビン薬(プラザキサ)が発売され、調べているうちこのHPを読み疑問が湧きました。プラザキサのリスクモニタリングにAPTTは納得ですが、過凝固を抑制しているか否かのモニタリングにはなにが適切なのでしょうか。
プラザキサがトロンビンの生成を抑制しなければF1+2は無意味ですし、プラザキサが結合したトロンビンがATVと結合してTATVになるのかならないのかで解釈は変わるでしょうし、SFMCの様な指標を使うのがいいのでしょうか。保険の制約の中仕事をしてますので宜しくお願いします。
(以上がご質問内容です)

分かる範囲内で解答させていただきます。
ご指摘の通り、凝固活性化を抑制しているかどうかのモニタリングを何で行うかという点は、極めて重要だと思っています。
一応、ブログ記事内でも、私見という前提での意見を書かせていただいていますが、今後の重要な検討課題と思っています。
http://www.3nai.jp/weblog/entry/49557.html

個人的には、プラザキサは凝固活性化のpositive feedbackを遮断することで、TAT、F1+2、SFなどを抑制するのではないかと推測しています(ただしデータがある訳ではありませんので、根拠はありません)。

また、プラザキサが結合したトロンビンはATと結合できないのではないかと思っています。しかし、これもまだ文献を調べていませんので、もし間違っていましたらすいません(早く回答させていただくことを優先いたしました)。

いつもご利用いただきありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

投稿者:血液・呼吸器内科: at 2011/08/25 11:02

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