金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年04月14日

深部静脈血栓症/肺塞栓(エコノミークラス症候群):症状&診断

深部静脈血栓症/肺塞栓(エコノミークラス症候群):整形外科手術、地震災害 から続く。

 



【深部静脈血栓症/肺塞栓の症状】

DVT症状


深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)と肺塞栓(pulmonary embolism:PE)の臨床症状は、典型例から非典型例までいろいろです。

 

DVTの症状

1.疼痛
2.腫脹(末梢まで腫脹)
3.発赤
4.熱感
5.Homan’s sign(足の背屈で腓腹部に疼痛)

 


PEの症状

1.突発的な胸痛、呼吸困難
2.血痰、喀血
3.ショック
4.意識消失
5.無症状も少なくない


典型例では、上記のような臨床症状がみられます。

ただし、DVT、PEともに、全く症状がなく検査(下肢静脈エコー、胸部造影CTなど)によって初めて分かるということも少なくありません。ただし、臨床症状がないから大丈夫かと言いますと、そういう訳ではありません。

たとえばDVTの場合、下肢の腫脹のないDVTの方が、血流によってかえって血栓が遊離してPEを起こしやすいという考え方もあるのです。

 

 

 

【深部静脈血栓症/肺塞栓の診断】

DVT診断

深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓(PE)の診断は、いずれも、画像診断が基本的診断法になります。

DVTは、以前はRIベノグラフィーが中心的役割を果たしていた時代もありますが、現在は下肢静脈エコーが中心的役割を果たしています。DVT診断は、下肢静脈エコーなしには語れないと言っても過言ではないでしょう。造影CTを行うこともありますが、造影CTは肺塞栓の診断には有効ですが、DVT診断という観点からは下肢静脈エコーに軍配があがります。

PEは、まず造影CTを行って、致命的なPEがないか早々にチェックします。ただし、末梢レベルのPE診断には、肺血流スキャンが有効です。

DVT&PEを同時にチェックしたいということであれば、造影CTと下肢静脈エコーの組み合わせが最強かも知れません。

ただし、これらと肩を並べるようにとても大事な検査があります。それは、Dダイマーという検査です。この検査は、威力を発揮します。

 

 

【Dダイマーの威力】

血液検査のDダイマーは、今では深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)の診断になくてはならない重要な検査です。

Dダイマーがどのようなものかについては、以前の記事もご参照いただければと思います(Dダイマー関連記事)。

もちろん、画像診断は基本的診断法ではありますが、Dダイマーは画像診断と同等以上の価値があります。それは、DVT&PE診断における、Dダイマーの陰性的中率の高さです。2003年に、N Engl J Medという一流雑誌に報告されました。

陰性的中率(negative predictive value:NPV)が高いというのはどういうことかと言いますと、Dダイマーが正常であれば、DVT&PEを否定できるという意味です。

検査の中には侵襲的な検査もあるなかで、Dダイマー血液検査をするだけです。
しかも、最近では大病院でなくても簡単に設置できるコンパクトなタイプのDダイマー測定機器も登場してきています。

もし、Dダイマーが正常であることが分かりますと、そのあとの検査を簡略化できる可能性があるのです。現在、DVT&PE診断におけるDダイマーの地位は極めて高いものになっていますが、その理由は、素晴らしい陰性的中率の高さにあります。

なお、念のためですが、陽性的中率は高くありません。確認しておきたいと思います。Dダイマーが高いからと言ってもDVTという訳ではありませんが、Dダイマーが正常であればDVTを否定できるという訳です。

Dダイマーが正常であれば、ほとんど100%DVTを否定できるというのは極めてパワフルなマーカーということができます。

 

(続く)

深部静脈血栓症/肺塞栓(エコノミークラス症候群):治療

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関連記事:深部静脈血栓症と血栓性静脈炎の違い


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:10| 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)

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