深部静脈血栓症/肺塞栓(エコノミークラス症候群):予防、ガイドライン
深部静脈血栓症/肺塞栓(エコノミークラス症候群):治療から続く。
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【深部静脈血栓症/肺塞栓の予防】
心原性脳塞栓に代表されるように、血栓症は一旦発症してしまいますと不可逆的な機能麻痺を残してしまったり、最悪の場合には死に至ってしまうことがあります。
血栓症予防の重要性は、心原性脳塞栓のみならず、静脈血栓塞栓症(VTE)(深部静脈血栓症(DVT)&肺塞栓(PE))についても全く同様です。特に、肺塞栓(PE)を発症しますと致命症になってしまうことがあります。
さて、静脈血栓塞栓症の発症予防のためにはどうすれば良いでしょうか?
1)足関節の底背屈運動:
いわゆる下肢の「筋肉ポンプ」を働かせる行動になります。車中泊や、ロングフライトで、静脈血栓塞栓症を発症しやすくなるのは、下肢を動かすことができず筋肉ポンプが、働かなくなるためです。
筋肉ポンプは、下肢の静脈血を心臓側へ還す上で、とても重要な働きを演じているのです。
2)脱水を避ける:
脱水になりますと、血液粘度が上昇し、血栓症を誘発しやすくなります。脱水にならないような水分補給が重要です。ただし、アルコールには利尿作用がありますので、同じ水分とは言っても逆効果です。
3)弾性ストッキングの装着:
これは極めてDVT予防効果があります。表在血管の血液の鬱滞をなくし、深部静脈の血流を増加させます。患者さんから下肢をしめつけると血流が悪くなるのではないかというご質問をよくお受けいたしますが、そのようなことはありません。静脈血流は良くなるのです。
管理人は、20〜30年後には、世界中の人類が、疾患の有無とは関係なく弾性ストッキングを装着する時代がくるのではないかと真剣に思っています(弾スト時代の到来)。
【静脈血栓塞栓症の予防ガイドライン】
治療以上に重要なのが予防です。
手術後、特に整形外科手術後に、深部静脈血栓症を高率に発症することにつきましては既に記事にさせていただきました(参考記事)。肺塞栓まで発症してしまいますと、致命症になることがあります。折角、手術に成功しましても、術後に静脈血栓塞栓症を発症しては、術後の経過を一気に悪くしてしまいます。
現在、肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインが発行されており、術後の肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)に対する注意が呼びかけられています。
詳細はガイドラインを見ていただくのが良いのですが、ポイントは、
1)早期離床、積極的運動:いわゆる筋肉ポンプを働かせる訳です。
2)弾性ストッキング:予防効果が大きいです。
3)間欠的空気圧迫法:予防法ですが、治療には用いてはいけません。深部静脈血栓症があるにもかかわらず、間欠的空気圧迫法を行いますとかえって肺塞栓を誘発してしまいます。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:28| 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)