後天性血友病(2):病態、疫学、発症率
前回記事(後天性血友病(1):第VIII因子インヒビター)からの続きです。
後天性血友病(Acquired Hemophilia)
【病態】
1. 従来出血性素因がみられなかった個人に、出血症状(しばしば重篤)で発症する後天性出血性疾患です。この病気は、先天性の血友病とは全く無関係ですので、男性にも女性にも発症します。
なお、前回の記事でも書かせていただいたように、先天性の血友病Aの患者さんにおいても、第VIII因子製剤の投与に伴って第VIII因子に対する同種抗体(第VIII因子インヒビター)が出現することがありますが、この場合は後天性血友病とは言いませんので、念のため補足いたします。
2. 本態は血液凝固第VIII 因子に対する自己抗体の出現による第VIII 因子活性の低下です。このために、しばしば重篤な出血症状をきたすことになります。
3. 通常、血友病と言えば先天性のものを意味しますが、この疾患は後天性の凝固異常症ということになります。
【疫学】
1. 発症率は、年間 1人/100 万人で、わが国では毎年約100 人の発症があることになります。ただし、この数字は相当に低く算出されているのではないかと思います。管理人1人の経験だけでも、この1年間で数人の後天性血友病の患者さんのご相談を北陸各地の医療機関からお受けしたように思います。
2. 発生率において男女差はありません。
3. 死亡率は、報告によっても異なりますが、10〜20%程度です。30%という報告もあります。難病と言えます。
4. 発生年齢は20-30 歳と60-70 歳に2大ピークがあります。
5. 最大30%の症例で自己抗体が自然消失すると言う報告があります。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:21| 出血性疾患 | コメント(0)