金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年06月04日

後天性血友病(6):止血治療、免疫抑制療法

前回記事(後天性血友病(5):クロスミキシング試験での2時間incubation)からの続きです。

 

後天性血友病6
 
 
 後天性血友病(Acquired Hemophilia)


【治療】

後天性血友病の治療は、大きく止血治療と、免疫抑制療法に分けられます。

止血治療は、現在進行形中の出血に対して行う治療です。言わば、緊急避難的な治療ということができます。止血治療を行っても、後天性血友病が治る(第VIII因子に対する抗体が消失する)という訳ではありません。

これに対して、免疫抑制療法は第VIII因子インヒビターの消失を期待する治療です。後天性血友病に対する免疫抑制療法は、この病気に対する治療の根幹部 分になります。しかし、止血治療を上手に組み合わせませんと、患者さんの救命につながらないことが多々ありますので、止血治療も極めて重要です。


止血療法

1)遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa:商品名ノボセブン
2)活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC:商品名ファイバ)
3)第VIII因子補充療法(インヒビター力価の低い症例(<5BU))
4)酢酸デスモプレシン(DDAVP)(インヒビター力価の低い症例(<5BU))
5)血漿交換および血漿免疫吸着療法

 

免疫抑制療法( インヒビター産生抑制)

1)副腎皮質ステロイド(時に、パルス療法も):第一選択薬です。
2)サイクロフォスファミド(商品名エンドキサン):時に、副腎皮質ステロイドと併用で使用します。
3)リツキシマブ:ここから後は、保険収載されていない治療法ですが、有効という報告があります。
4)シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、シロリムス
5)免疫グロブリン大量療法(IVIG)

 

(補足)

同じ第VIII因子インヒビターであっても、先天性血友病Aに対して第VIII因子濃縮製剤を投与したことに伴い出現した場合には、ステロイドは無効です。その理由は、管理人は良く分かりません。。。


(続く)

後天性血友病(7):APTT混合試験の例

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:12| 出血性疾患 | コメント(0)

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