金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年06月14日

DIC診断基準の今後(図解43)

急性期DIC診断基準とは:救急領域(図解42)から続く

 
DIC診断基準の今後

厚生労働省DIC診断基準(旧厚生省DIC診断基準)、急性期DIC診断基準ともにとても優れた診断基準なのですが、なお発展させる余地があるのではないかと思われます。

ご批判を承知の上で、独断と偏見で今後のDIC診断基準はどうあるべきか考えてみたいと思います。


1)    DICの本態は「全身性」「持続性」の「著しい」「凝固活性化状態」です。やはり、この本態を評価するマーカーは絶対にDIC診断基準に組み込むべきではないでしょうか。具体的には、TAT、F1+2、SF、FMCなどの分子マーカーが候補にあがります。


2)    分子マーカーは、いつでもどこでも測定できる訳ではないので、DIC診断基準に組み込むのは如何なものかという指摘もあります。確かにその通りだと思います。しかし、DICの診断は「いつでもどこでも測定できるマーカーのみで」と、10年先、20年先まで言い続けている訳にはいきません。いつまでたっても医学の発展はないことになってしまいます。やはり早々に、踏ん切りをつけるべきではないでしょうか。


3)    分子マーカーをDIC診断基準に組み込むことによって、分子マーカーが一気に全国医療機関に浸透していくというpositiveな効果を期待すべきではないかと思います。大反発を承知で極論いたしますと、TAT、F1+2、SF、FMCなどの分子マーカーを測定できない医療期間はDICを診療してはいけないくらいになれば、日本におけるDIC診療レベルは飛躍的にアップするのではないでしょうか。誤解の無いように補足いたしますと、適切なDIC診療を行えるように、全国各医療機関は早々に分子マーカーを測定できるように整備した方が良いという意味で書かせていただきました。

4)    基礎疾患の存在は当然ですから、診断基準に組み込む必要はないと思いますが如何でしょうか。

5)    臨床症状(出血症状、臓器症状)を診断基準に組み込みますと、臨床症状が出現しませんとDICと診断されにくくなります。DIC早期診断に悪影響と考えられます。DICの臨床症状はもちろん知っている必要がありますが、診断基準に組み込むのは如何なものでしょうか。

6)    FDP(Dダイマー)は、やはりDIC診断に不可欠です。DIC診断は、FDP(Dダイマー)なしには語れないでしょう。

7)    血小板数も、もちろん不可欠ですが、白血病群では血小板数をはずす必要があります。

8)    フィブリノゲンは、感染症を基礎疾患としたDICでは低下しませんが、急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICのように線溶亢進型DICでは著減します。

9)    プロトロンビン時間(PT)は、DICの要素でも延長しますが、むしろ肝不全やビタミンK欠乏症など他の要素で延長することの方が多いのではないでしょうか。たとえば、某医療機関で某日PTの延長がみられた全ての症例をチェックした場合、PT延長の原因として最も多いのは何でしょうか。決してDICではなく、間違いなく肝予備能の低下ではないかと思います(ワーファリン内服例を除く)。

10)    線溶活性化の程度は、DICの病態を大きく分けることになります。PICのような線溶活性化のマーカーは、DIC診断基準に組み込むとまでは言わなくても、DIC病型分類のマーカーとして取り入れたいところです。


上記の点をふまえて、今後のDIC診断基準に取り入れられるべきマーカーは以下でしょうか。



【DIC診断基準】基礎疾患の存在は必須

・ 血小板数(白血病群では除く)

・ FDP(Dダイマー)

・TAT and/or SF, F1+2, FMC



【DIC病型分類】

・PIC

・α2PI

・ FDP、FDP/Dダイマー比

・ フィブリノゲン
 

(続く)

DICにおける線溶活性化の意義(図解44)

 


 
 
  【DIC関連のリンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】(シリーズ進行中!!)

血液凝固検査入門(全40記事)

DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)

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【金沢大学第三内科関連のリンク】

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:24| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0)

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