出血傾向(病態):医学コアカリ対応(1)
金沢大学血液内科・呼吸器内科(第三内科)ブログとしましては、医学部コア・カリキュラム(CBT)対応記事として、「出血傾向」をお届けしたいと思います。
【出血傾向とは】(出血傾向の定義)
止血機序に障害をきたし、正常な止血が行われない状態です。
【止血・血栓の病態生理】
止血(hemostasis)は、人間が生存していく上で、必要不可欠な生理現象です。血管の破綻を生じますと血管を反応の場としまして、血小板および凝固因子といった止血因子が集合し止血機序が働きます。
一方、血栓症(thrombosis)は、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓などに代表されるように致命症となることもある怖い病態です。しかし、この時も同じ役者である血小板および凝固因子が、血管を反応の場として血栓症の発症に重要な役割を演じているのです。
このように、血小板と凝固因子は止血という良いことも、血栓症という悪いこともしていると言うことができます。
血液は、正常な場合には血管内では凝固することなく循環し、血管外へ出ると凝固して止血します。この当然と思っている生理が時に破綻することがあります。つまり、血管内であるにも関わらず凝固したり(これを血栓症と言います)、血管外に出ても凝固せずに異常出血をきたすことがあります(これを出血傾向と言います)。
さて、出血傾向の話題に戻したいと思います。
血管が破綻しますと、以下のような機序により止血が進行します。
止血機序のステップ
1)血小板の粘着
2)血小板の凝集(ここまでの血小板主体の止血機序を一次止血と言います)
3)凝固反応の進行によるフィブリン形成(凝固活性化による止血機序を二次次止血と言います)
4)過剰に形成されたフィブリンは線溶機序により溶解します。
出血傾向は、上記の止血機序に障害があった場合にみられることになります。
出血傾向の原因(分類)
1) 血小板数数の低下:
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、再生不良性貧血など。
2) 血小板機能の低下:
血小板無力症、von Willebrand病、NSAID(非ステロイド系消炎鎮痛剤)(アスピリンなど)内服、尿毒症など。
3) 凝固異常:
4) 線溶過剰亢進:
線溶亢進型DIC( 1)2)の要素もあります)など。
5) 血管壁の異常:
アレルギー性紫斑病(Schoenlein-Henoch紫斑病)、単純性紫斑、老人性紫斑など。
また、出血傾向は、先天性のものと後天性のものに大別されます。
上記した疾患のうち、先天性のものは、血小板無力症、von Willebrand病、血友病A、血友病Bであり、他は後天性です。
出血傾向は、医学生の皆さんにとっては最初はとっつきにくいかも知れませんが、一旦完璧に理解してしまうと生涯を通してその理解を維持できるというところがあると思います。
是非とも、早い段階で極めてしまいましょう!
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:45| 出血性疾患 | コメント(0)