動脈・静脈血栓症:真性赤血球増加症、本態性血小板血症(2)
骨髄増殖性疾患:真性赤血球増加症(真性多血症)、本態性血小板血症と血栓症(1)から続く
シリーズの2回目です。
なお、今回の記事を含め今後登場する引用論文(数字で記載)は、このシリーズの最後にまとめて紹介させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【PV、ETと血栓症】
<動脈血栓症>
真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)のいずれにおいても、動脈血栓症は診断時および経過中における臨床症状として極めて高頻度にみられます。PVでは6〜7割、ETでは7〜9割に発症するとされています。ただし、治療介入のために、診断後の経過中における発症頻度は低下します1)2)3)4)5)6)7)。
動脈血栓症の代表的疾患として脳梗塞、心筋梗塞が知られていますが、特に脳梗塞は無治療のPVの主たる死因であると報告されています(PVにおける全ての血栓症の30〜40%を占めます)2)。
一方、PVにおける心筋梗塞の発症は比較的少ないと報告されています。PV、ETのいずれにおいても、脳梗塞、心筋梗塞以外の部位における血栓症も珍しくないようです2)4)(表1&2)。
表1 真性赤血球増加症(PV)1,638例の背景
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登録時の年齢 65.4±12.7(歳)
診断時の年齢 60.4±13.2(歳)
男性/女性 57.5/42.5(%)
血栓症の既往 38.6(%)
動脈血栓症の既往 28.7(%)
・心筋梗塞 8.9(%)
・脳梗塞 8.9(%)
・一過性脳虚血発作 10.3(%)
・末梢動脈血栓症 5.5(%)
静脈血栓症の既往 13.7(%)
・深部静脈血栓症 8.2(%)
・肺塞栓 2.4(%)
・表在性血栓性静脈炎 6.1(%)
先端紅痛症 5.3(%)
間欠性跛行 4.7(%)
出血の既往 8.1(%)
抗血小板薬内服 58.3(%)
抗凝固薬内服 6.7(%)
瀉血治療 63.5(%)
血球減少治療 61.6(%)
・ヒドロキシユレア 48.4(%)
・ Pipobroman 6.5(%)
・インターフェロン 3.9(%)
・ブスルファン 3.7(%)
・P-32 2.7(%)
・Chlorambucil 0.3(%)
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表2 本態性血小板血症(ET)231例における血栓症と出血
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血栓症&出血 診断時ーー診断後
血栓症
・脳梗塞 20ーー15
・心筋梗塞 3ーー4
・末梢動脈血栓症 6ーー1
・門脈血栓症 1ーー0
・静脈血栓塞栓症 0ーー2
・網脈静脈閉塞症 0ーー1
(血栓症合計) 30(13%)ーー23(10%)
出血
・胃腸出血 2ーー8
・歯肉出血 3ーー0
・脳出血 0ーー3
・鼻血 0ーー3
・血痰 1ーー0
・軟部組織血腫 1ーー1
(出血合計) 7(3%)ーー15(6%)
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PVにおける血栓症の発症頻度を病期に応じて評価しますと、脳梗塞はPV診断時および診断前の5年間において高頻度です2)。
一過性脳虚血発作も、PVにおいて高頻度にみられる動脈血栓症ですが、脳梗塞が治療介入によって発症頻度が低下するのに対しまして、一過性脳虚血発作の発症頻度は低下しないと報告されています2)9)(図1)。
<静脈血栓症>
PVやETにおいては、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞線(pulmonary embolism:PE)などの静脈血栓症の発症頻度も高いことが知られています。また、一般にはまれな部位の静脈血栓症も、これらの疾患では珍しくありません。
特に、静脈血栓症は、PVにおいては全血栓症の1/3と高頻度です2)(表1)。
脳静脈洞や腹腔内静脈血栓症(門脈血栓症、肝静脈血栓症)の報告も多いです。このうち、腹腔内静脈血栓症は、PV診断時や診断前での発症が多いのが特徴です2)9)(図1)。
逆に、腹腔内静脈血栓症の症例のうち40〜60%の症例において潜在的にCMPDが存在するという報告もあります10)11)。このため、腹腔内静脈血栓症の症例に遭遇した場合には、CMPDが潜んでいないかどうかの点からの精査(JAK2遺伝子変異の検査を含む)が必要と考えられます。
CMPDにおいて腹腔内静脈血栓症が多い理由としては、門脈圧亢進、うっ血性脾腫の存在、肝における髄外造血などが指摘されていますが、なお検討すべき課題です。
(続く)
【凝固検査&DIC】
1)血液凝固検査入門
2)DIC(図解)
3)DIC(治療ほか)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:41| 血栓性疾患 | コメント(0)