先天性第V因子欠損症と出血傾向
今回は、先天性第V因子欠損症に関する最近の総説論文(BJHより)を紹介させていただきます。
血液凝固第V因子(Factor V:FV)は、血漿中のみならず、血小板中にも存在しています。
血漿中に80%、血小板のα顆粒中に20%存在することが知られています。
FVノックアウトマウスにおいては、全て致命的になることからも、FVは必要不可欠な凝固因子と考えられます。
しかし、驚くべきことに人間におけるFV欠損症は、重症の場合であってもほとんど致命症となることがありません。
確かにFV欠損症の新生児において致命的な頭蓋内出血がみられたという報告もありますが、一方で、ほとんどのFV欠損症においては(FVが検出されない重症例であっても)、出血症状はきわめて軽症〜中等症であり、予防治療を必要としないことが知られています。
FV欠損症の表現型に多様性がある理由はほとんど分かっていませんが、血小板が重要な意義を有していると考えられています。
さらに、以下のBJH論文では、先天性第V因子欠損症では生理的凝固阻止因子であるTFPIが低下しており、FVが2%未満に低下していてもトロンビン形成が低下しないことを紹介しています。
先天性第V因子欠損症における第V因子の意義、臨床症状についてはなお検討すべき点が多いようです。
なお、詳細は以下の論文をご覧くださいませ。
Br J Hematol 146: 17-26, 2009
【先天性血栓性素因】アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:46| 出血性疾患 | コメント(0)