金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年09月27日

抗リン脂質抗体症候群:医師国家試験 問題対策


先天性アンチトロンビン欠損症など :医師国家試験対策から続く。

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<医学部学生対象>
血液内科(血栓止血領域)(16)

 

【後天性血栓性疾患】


抗リン脂質抗体症候群【重要疾患】
要対策】
(Antiphospholipid syndrome:APS)

詳細記事抗リン脂質抗体症候群


<概念>
・リン脂質またはリン脂質に結合した蛋白に対する自己抗体(抗リン脂質抗体)が出現することにより、血栓症(動脈も 静脈もあり)習慣性流産(不育症)を来す。
狭義の不妊ではなく、妊娠成立は同じ。
SLEなどの自己免疫性疾患、悪性腫瘍、薬物服用に伴い発症。また特発性のものも多い。
・後天性の血栓症の原因としてもっとも頻度が高い。

 劇症型APS: 外科手術,薬物投与,抗凝固療法中止などに伴い,全身性多臓器血栓症を来す.死亡率50%


<症状>
1. 動脈血栓症:
脳梗塞,一過性脳虚血発作【既出】
心筋梗塞(日本人には少い)
網膜中心(分枝)動脈血栓症
上&下腸管膜動脈血栓症【既出】

2.静脈血栓症: 
肺塞栓
深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT
網膜中心(分枝)静脈血栓症.
上&下腸管膜静脈血栓症
脳静脈洞血栓症
Budd-Chiari症候群【既出】

3.    不育症、習慣性流産【既出】
理由:胎盤に血栓ができるため
妊娠中期以降もあるのが特徴。

4. 網状皮斑:循環障害による【CBT既出】

5.てんかん,舞踏病,片頭痛.


<血栓傾向をきたす機序>
・不明。単一ではない。多数の学説あり。


<診断>下記の1.&2.の両者を満たすもの

1.臨床症状の存在
(1)血栓症
(2)習慣性流産(不育症)

2.下記の抗リン脂質抗体のいずれか一方以上が陽性
(1)抗カルジオリピン抗体:β2-glycoprotein I (β2-GPI)依存性のものが重要
(2)ループスアンチコアグラント(Lupus anticoagulant :LA)


<検査>
1. 抗カルジオリピン抗体陽性【既出】
2. ループスアンチコアグラント陽性
【重要】
3. 梅毒反応の生物学的疑陽性(BFP)【既出】
4. 血小板数の低下:5-10万/μL程度が多い【既出】
5. 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長【既出】【ヤマ】
6. 複数の凝固因子の低下
7. 抗核抗体(ANA)などの自己抗体の陽性

(注意1)
・これらの検査所見は,高頻度にみられるが必ずみられる訳ではない.
たとえば,APTTの延長のないAPSも存在するのでAPTTはスクリーニング検査には使用できない.

(注意2)
ITP (特発性血小板減少性紫斑病)APS 両者の合併あり。
ITPの症例では,抗リン脂質抗体の有無のチェックが必要。
特に、ITPでの摘脾後には、血小板数が上昇することと、安静臥床とあいまって要注。合併例での治療は大変難しい!血栓も出血もきたしやすい。


<治療>
抗リン脂質抗体を消失させることはできない。
抗血栓療法による治療を行う。
アスピリンによる抗血小板療法よりも、ワルファリンによる抗凝固療法の方が有効とされる。
ただし、ワルファリンには、出血の他に、催奇性(骨形成不全)という重大な副作用があるため、習慣性流産の女性には使用できない.
  ・
ワルファリンの催奇性の理由:
 骨代謝に関わる押す低カルシンは、ビタミンK依存性。
習慣性流産の女性の妊娠時には,アスピリンの内服と,ヘパリンの皮下注.
 

cf. ビタミンK依存性蛋白【重要】
凝固因子:FVII、IX、X、II
凝固阻止因子:プロテインC、プロテインS
骨代謝:オステオカルシン


(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:55| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0)

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