金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年10月21日

医師国家試験対策:統合試験過去問より(喀血)

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金沢大学医学部統合試験(呼吸器内科)過去問です。

〜過去問の紹介と解説の記事(兼:医師国家試験対策)〜
  

 

次の分を読み、1、2の問いに答えよ。

54歳 女性。喀血の精査目的に入院した。

現病歴
幼少時から、何度か肺炎を起こしたことがあった。成人しても、一年を通して湿性咳嗽が多かった。鼻汁、後鼻漏なども続いており、34歳時に慢性副鼻腔炎を指摘された。数年前より年に一度程度、少量の血痰を認めていたが、その都度、近医にて止血剤を処方されて軽快していた。

1年以上血痰はなかったが、平成20年6月15日に庭仕事をしていたところ、突然咳嗽とともにコップ一杯ほどの喀血を認めた。近医を受診し、止血剤の点滴を受けたが、翌日もコップ一杯ほどの喀血を認め、点滴と抗菌薬処方が行われた。

血痰、喀血は止まったが、精査目的に当院紹介となった。寝汗、発熱、体重減少は認めていない。

 

既往歴
34歳 尿道腫瘍(手術)、52歳 子宮筋腫(手術)、アレルギー歴なし

現症
身長 145 cm、体重 47 kg、体温 36.3 ℃、脈拍 62/分、整、血圧 102/62 mmHg、呼吸回数 14回/分、SpO2 97%
意識清明、結膜 貧血・黄疸 なし、口腔内 異常なし、頚部 リンパ節触知せず、甲状腺腫大なし、胸部  心音 I音、II音 異常なし、雑音なし、呼吸音 正常肺胞呼吸音、左下肺野を中心に吸気時にcoarse cracklesを聴取。
腹部 平坦、軟、圧痛なし、下腹部に手術瘢痕あり、腫瘤触知せず。
四肢 明らかな神経学的所見の異常なし、浮腫なし、バチ指なし。

 

入院時検査所見
血液検査:WBC 5600/μl (Neu 43.6 %, Eos 2.5 %, Bas 0.5 %, Mon 5.2 %, Lym 48.2 %), RBC 465x104 /μl、 Hb 13.4 g/dl、 Ht 42.6 %、 Plt 19.4x104 /μl

BUN 10.0 mg/dl、 Cr 0.49 mg/dl、Na 144 mEq/l、K 4.4 mEq/l、Cl 107 mEq/l、AST 23  IU、 ALT 15 IU、 ALP 359 IU/l、 γ-GTP 23 IU/l、 LDH 144 IU/l、 TP 8.1 g/dl (Alb 61.7 %、 α1-gl 2.1 %、α2-gl 7.9 %、β-gl 7.6 %、γ-gl 20.7 %)、CK 57 IU/l

 

血沈(1時間値) 36 mm、 CRP 0.1 mg/dl、FBS 118 mg/dl、IgG 1540 mg/dl、IgA 312 mg/dl、IgM 127 mg/dl、IgE 28 IU/l、フィブリノゲン 369 mg/dl、PT  11.2 秒、APTT  30.8 秒、寒冷凝集素 <8


喀痰検査:一般細菌培養 P.aeruginosa (+)、抗酸菌検査 陰性、細胞診 陰性。

上部消化管検査(胃カメラ)では慢性胃炎の所見のみであった。

胸部X線写真&CT 入院時のものを以下に示す。

 

気管支拡張症1 気管支拡張症2

 

1)喀血の原因として最も考えられるのはどれか。
        
a 気管支拡張症                    
b 肺結核                    
c アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
d 肺癌
e 肺血栓塞栓症



2)治療方針(手術適応)決定のために必要な検査はどれか。
     
a 気管支造影検査                        
b 肺動脈造影検査                
c 気管支動脈造影検査            
d 肺血流スキャン                
e 肺換気スキャン

 

【作問のねらい】

喀血は生命を脅かすだけではなく、恐怖心をあおる重大な症状である。原因には数多くのものあるが、最も頻度の高い原因疾患は気管支拡張症である。胸部単純X線写真と胸部CT写真にて、その診断は容易である。薬物療法によってコントロールできない場合には、責任病巣を切除することも重要な治療選択肢であり、そのために気管支動脈造影検査が必須となる。

 

【正答】

1)a

2)c                               


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:29| 医師国家試験・専門医試験対策