金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年12月02日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の臨床症状:臨床検査からみた血栓症(4)

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臨床検査からみた血栓症(インデックスページ)

 

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抗リン脂質抗体症候群の改定分類基準 (2006年版)

以下の臨床所見の1項目以上が存在し、かつ検査所見の1項目以上が12週間以上の間隔をあけて2回以上検出された場合を抗リン脂質抗体症候群(APS)と分類する


臨床所見

1. 血栓症
画像検査や病理検査で確認できる1つ以上の動静脈血栓症(血管炎は除く)

2.妊娠合併症
(a) 妊娠10週以降の胎児奇形のない1回以上の子宮内胎児死亡
(b) 妊娠高血圧症、子癇もしくは胎盤機能不全などによる1回以上の妊娠34週未満の早産
(c) 妊娠10週未満の3回以上連続する原因不明習慣性流産

検査所見   
1.ループスアンチコアグラント(LA)陽性(LAの測定は国際血栓止血学会のガイドラインに従う)
2.IgGまたはIgM型抗カルジオリピン抗体陽性:中等度以上の力価または健常人の99パーセンタイル以上
3.IgGまたはIgM型抗β2−グリコプロテインT抗体陽性:健常人の99パーセンタイル以上

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【血栓性素因の臨床症状】


<抗リン脂質抗体症候群(APS)>

抗リン脂質抗体症候群(APS)は、動脈&静脈血栓症または妊娠合併症を臨床症状とする自己免疫疾患です。

血栓症の特徴は、動脈・静脈のいずれにも発症し、大血管から毛細血管レベルまですべての血管に発症します。

動脈血栓症では、脳梗塞、一過性脳虚血発作などの脳血管障害が圧倒的に多く(動脈血栓の9割)、虚血性心疾患は少ないです。

妊娠合併症には、自然流産・不育症、妊娠高血圧症・子癇があります。

APS患者の流産は、妊娠中期・後期にも起きうることが特徴です。


血栓症と妊娠合併症以外に、心弁膜症、網状皮斑、血小板数減少症、微小血栓による腎障害、舞踏病などの神経疾患が、抗リン脂質抗体関連疾患とされていますので、これらの所見に注意する必要があります。

好発年齢は特になく、幼少児期でも発症する場合があります。

自己免疫疾患に併発することが多いため、男女比は1 : 2〜5と女性に発症しやすいですが、何ら基礎疾患を有さない原発性APSでは、男女差はほとんどありません。


 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:03| 血栓性疾患 | コメント(0)

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