先天性血栓性素因:臨床検査からみた血栓症(6)
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【血栓性素因のスクリーニング検査】ー先天性血栓性素因ー
本邦における先天性血栓性素因の要因
現在提唱されている先天性血栓性素因としての病態・疾患を、以下に示します。
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1)凝固制御因子の低下
・アンチトロンビン欠損症
・プロテインC欠損症
・プロテインS欠損症
・第V因子Leiden変異(活性化プロテインC抵抗性)(日本人にはない)
・トロンボモジュリン異常症*
・tissue factor pathway inhibitor(TFPI)欠損症*
2)線溶能の低下
・プラスミノゲン異常症*
・組織プラスミノゲンアクチベーター放出障害*
・プラスミノゲンアクチベーター・インヒビター−1(PAI-1)過剰症*
・ヒスチジンリッチグリコプロテイン増加症*
3)凝固因子の増加
・プロトロンビンG20210A(日本人にはない)
・第VIII因子増加症
・第XI因子増加症*
4)その他
・異常フィブリノゲン血症
・第XII因子欠損症*
・高ホモシステイン血症
・高リポ蛋白(a)血症
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(*:血栓性素因としての意義が不確定あるいは以前提唱されていたけれども否定されたものです)
1)凝固制御系因子の欠乏:
AT、PC、PS活性が正常の50%程度に低下(ヘテロ接合体)しますと血栓傾向を示します。
特に先天性PS欠損症の発症頻度は1.12%と、欧米人(0.16〜0.21%)に比べて明らかに高く、中でもPS Lys196Glu変異のアレル頻度は0.9%で日本人のVTEの危険因子として重要です(先天性血栓性素因)。
他にヘパリンコファクターIIやtissue factor pathway inhibitor(TFPI)の欠乏症で血栓症の報告がありますが、血栓性素因としての意義はまだ確立されていません。
最近、胎児性陳旧性脳梗塞を認めたトロンボモジュリン(TM)異常症(Gly412Asp変異)ホモ接合体の症例報告や、Arg455Val変異多型を保有する男性でVTEとの関連性を認めた報告があり、VTEの遺伝因子候補として注目されています。
2)線溶能の低下:
プラスミノゲン(Plg)異常症(栃木型:Ala620Thr)は日本人の遺伝子多型の一つですが、血栓症の危険因子でないことが判明しています。
また、線溶能低下をきたす病態である組織プラスミノゲンアクチベーター放出障害や、プラスミノゲンアクチベーター•インヒビター1(PAI-1)過剰症において血栓症家系の報告がありますが、血栓性素因としての意義は確立されていません。
3)凝固因子の増加:
第VIII因子(FVIII)活性の増加はVTE(深部静脈血栓症/肺塞栓)の危険因子と考えられています。FVIII活性が10 IU/dl(10%)増加するとVTEのリスクが10%増加するといわれています。しかし、現在のところ遺伝子変異部位は不明です。
4)その他:
フィブリノゲン(Fbg)異常症はFbg活性が低下していますが、出血傾向と血栓傾向の片方あるいは両方の症状を認めることが知られています。
また、第XII因子欠損症と血栓症については、一時期その関連が注目されましたが、現在のところ因果関係は明らかではありません。
なお、第V因子Leiden変異(506ArgGln変異)やプロトロンビン遺伝子の3’非翻訳領域の20210G>A変異は、白人種の血栓素因として重要ですが、日本人にはみられていません。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:42| 血栓性疾患 | コメント(0)